バンクーバー新報 2012年5月31日第22号

 第二次世界大戦前の27年間、シニア・アマチュア・リーグで数々の優勝を手にした伝説の日系人野球チーム『朝日軍』。その活躍を日系人の歴史とともに綴ったフィクション『バンクーバー朝日軍』(テッド・Y・フルモト著)の漫画化が決定した。小学館のカナダ取材をコーディネートした記者が、取材班の3日間をリポートする。


父から聞いた朝日軍

日系博物館で朝日軍ユニフォームを手にする朝日軍OBケイ上西さん(90)。テッド・Y・フルモト氏(左)と漫画家の原秀則氏(右)

 「カナダで生まれ、日米開戦前に日本に帰国した父は普段は穏やかな人でしたが、こと野球の話になると熱くなりました」と話すフルモト氏。

 彼の父、故テディー・フルモトこそが、伝説の日系人アマチュア野球チーム『朝日軍』の名ピッチャーだったのである。

 朝日軍の存在は日本で知られていなかったため、大学生の頃プロテスタントの牧師が朝日軍や父親のことを覚えていると言ったときはびっくりしたという。

 さらにきっかけは1994年にTBSテレビで放送された報道特集『知られざるカナダ朝日軍』。

 番組プロデューサーに書いた手紙から、朝日軍の生存者や『レジェンド・オブ・ベースボール』の著者パット足立さんを紹介され、1998年、フルモト氏は父の故郷カナダを訪れることになる。

伝説のチームを本に

 トロントでパット足立さん、ケニー沓掛さんほか、カナダ全国から集まった朝日軍の往年のプレーヤーたちとその家族と感動の対面をし父の話を聞いたフルモト氏は、改めて朝日軍の偉大さを実感した。

 このとき、日本では知られていない朝日軍の存在と活躍を世界に知らせるという課題を授かって帰国した。