テロとの戦いを始めて早10年。昨年末、ようやくイラクから完全撤退した米軍だが、アフガニスタンでは依然泥沼にどっぷり浸かり込んだまま。

 5月21日、シカゴで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議も、戦闘任務を2014年までに終え、2024年までに資金面でもアフガニスタンを自立させるという変わり映えしない宣言を残し幕を閉じた。

アフガニスタンからの「名誉ある撤退」も怪しくなった米国

スーザの伝記映画「STARS AND STRIPES FOREVER」

 6月6日には国際治安支援部隊(ISAF)の誤爆で市民18人が死亡するなど誤爆は相次いでいる。3月には米軍兵が銃を乱射し17人を殺害する事件も起きている。

 この事件に関しては、容疑者が精神的に不安定な状態にあったとも言われ、長引く戦争で軍全体が疲弊しているとの指摘もある。

 責任ある戦争終結への道筋をつけていこうと言えば聞こえはいいが、今や「名誉ある撤退」も怪しい状況なのである。

 そんなアフガニスタン問題を多面的に捉えた『大いなる陰謀』(2007)では、米国を勝利へと導く新たなる作戦を遂行しようとするトム・クルーズ演じる共和党上院議員の姿がある。

 しかし、ウサマ・ビンラディン殺害という決定打を打ったはずの米国のこの1年の動きを見る限り、さらなる画期的展開を見せるとは思えない。

 クルーズ演じる次期大統領候補とも目される議員の部屋の壁には、ジョージ・W・ブッシュ政権の面々との写真に交じり「正義と平和なら正義を選ぶ」というセオドア・ルーズベルト第26代大統領の言葉が掲げられている。

 この議員のアグレッシブな行動の礎ということなのだろうが、今も共和党の好戦派の座右の銘となっているのだろうか?

 その正義とは何なのか、マイケル・サンデル教授でなくともつい問いかけたくなってしまう。