南国新聞 2012年5月24日号

 マレーシアでマッサージを受けたことがある日本人は少なくないはずだ。だが、マレーシアには日本のようなマッサージの資格制度や教育制度がないことはあまり知られていない。

 まったく経験がなくてもマッサージ店で働くことが出来るので、当然、店や施術者によって技術レベルの差は大きい。そこで、マレーシアにマッサージの教育プログラムと資格制度を確立しようと奮闘しているのが、自身もマッサージ店を経営しているノリマさん(59歳)だ。

 驚くのは、ノリマさんが弱視という障がいをもっているということだ。もともと、ノリマさんはマレーシア・ブラインド・アソシエーション(MBA)でマッサージのインストラクターをしていた。

 だが、視覚障がい者の生徒たちにマッサージを教えても、就職は厳しい。また、海外での視覚障がい者のマッサージについての研修に参加するなかで、マレーシアの視覚障がい者のマッサージ業界の質を向上させる必要があると感じるようになったという。

 MBAに改革案を提案したが受け入れられず、ならば自らやろうとマッサージ店の経営に乗りだしたのが1995年のことだ。

 とはいえ、女性で弱視、しかも当時はあまり世間的に印象がいいとはいえなかったマッサージ店をオープンするのは大変で、店舗を借りることすら難しかった。苦労の末オープンしたノリマさんの店は、マレー系の商業ベースのマッサージ店としては初めてのものだったという。

 ベッド1つの小さな店舗だったが、ここで働いて稼ぎつつ、年に2~3回中国でマッサージの短期講座に参加したりなど、さまざまな国でマッサージの勉強を続けた。

 そして、2004年、JICAのアジアの障がい者マッサージのプログラムに参加して沖縄に6カ月間滞在。そこで、日本のマッサージの教育制度や資格制度を知り、これをマレーシアにも確立したいと考えたという。

 JICAなどの支援を受けつつ、現在ではKL市内ラジャラウト通りのMedan MARA内、クアラルンプール国際空港LCCT、プトラジャヤ、ランカウィ国際空港にオープンした「NURI REFLEXOLOGY THERAPY」4店舗で視覚障がい者のマッサージ師を雇っている。

 マッサージ師の教育プログラムの確立にも着手し、サイバージャヤのカレッジで教えたり、自身でも小さなアカデミーを立ち上げたりしている。