鳩山由紀夫首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、自らが公約した「5月末決着」の断念を表明した。それでも引責辞任せず、政権居座りを決め込んでいる。一方、内閣支持率は20%を割り込む「危険水域」にまで下落し、鳩山政権で参院選に臨めば民主党は惨敗を免れない。それでも党内では沈黙が続き、「鳩山降ろし」の動きは出てこない。敗戦覚悟で参院選に突入するのだろうか。(敬称略)
「鳩山首相は辞めないだろう」――。民主党関係者や首相周辺、政治部記者の誰に聞いても、こういう答えが返ってきた。「首相はいたって元気」(首相周辺)なんだそうだ。
2010年5月12日夜、鳩山は英国の新首相キャメロンと電話会談し、「6月のカナダ・サミット(主要国首脳会議)で会えるのを楽しみにしている」と語った。参院選前の辞任など全く考えていない発言である。
この日、鳩山は普天間問題の「5月末決着」について、「首相としての国民との約束」と改めて強調した。しかし、鳩山が繰り返してきた「米国と移設先の地元と与党」の3者の合意を得た上での「決着」は、既に不可能な状況となっていた。
「羽根のように軽い」首相の言葉
翌13日、鳩山は普天間問題について「当然、6月以降も詰める必要があれば努力する」との意向を記者団に表明した。5月末までの決着を断念せざるを得ないことを初めて認めた発言である。メディアは一斉に「首相、月内断念を表明」(読売)などと書いた。
鳩山にすれば前言撤回など日常茶飯事だし、公約違反も「屁の河童」だろう。しかし、14日付の新聞各紙は社説で一斉に鳩山の責任を追及した。「首相は責任をどう取る」(毎日)、「普天間問題で首相への信頼は失墜した」(日経)、「約束守れぬ首相は辞めよ」(産経)と厳しい論調が相次いだ。唯一、朝日だけは鳩山擁護の姿勢が目立ち、普天間問題について「仕切り直すしかあるまい」などと甘いことを書いている。
秀逸だったのは毎日社説のこんなくだりだ。「『首相の約束』がこんなに軽くてよいのだろうか」「今や鳩山首相の言葉は羽根のように軽い」――。全く同感である。
驚くのは、鳩山が自らの発言がどう受け止められるかを全く理解していないことだ。「6月以降も努力する」と発言しながら、「5月決着断念」と報道されると、「何でこんな風に書かれてしまうのか」と不満を漏らしたという。
どこへ行った? 「職を賭す覚悟」
それまで鳩山は何と言ってきたのか。国会では「5月末までに移設先を決定する」(4月22日)、「全ての政策に職を賭す覚悟で臨んでいる。普天間移設先の問題も当然含まれる」(4月23日)――などと豪語してきた。
記者団に対しては、「全身全霊で、命を懸けてという思いも含めて、職を賭すというのはそういう思いで、連日努力している」(同日)と語っていた。鳩山の「職を賭す覚悟」「命を懸けて」といった言葉がいかに軽いか、つくづく思い知らされる。