北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は4月12日、北朝鮮が日本時間で13日午前7時39分、長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を黄海上空の南方に向けて発射したことを確認したと発表した。そして、NORADは長距離弾道ミサイル発射実験を「失敗」と判断している。
北朝鮮ミサイル失敗――内外に面子を失う
言うまでもなく、北朝鮮は明後日の金日成生誕100周年を期して、今次ミサイル発射実験を3代目の金正恩政権の基盤固めの“祝賀のための打ち上げ花火”として活用したかったはずだ。
父の金正日の場合は、自らの意思・戦術で、「喪に服する形」の演出を選択し、表舞台に登場するのを遅らせ、徹底的な権力闘争を優先した。
それとは対照的に、正恩の場合は、父とその側近の「振り付け」――遺訓統治――を方針として、拙速に、しかも祖父金日成の生誕100周年の佳節にタイミングを合わせ、もっとも華やかな形で――ミサイル実験を敢行し国際的な猛反発を招くというシナリオまで付加し――デビューを演出しようとした。
それが完全に裏目に出た格好だ。天候のせいにも、米国や日本の妨害のせいにもできない。自らの不手際によるとするほかない。
米・中・ロなど世界の自制要求無視も無視して敢行した長距離弾道ミサイル発射実験が失敗したことで、あの強い面子にこだわる民族・国家が完全に「面子を失う」に事態に直面した。
考えられるシナリオ
その1~「責任転嫁」
北朝鮮のデノミ(貨幣改革)の失敗の責任を問われて粛清された朴南基(パク・ナムギ)北朝鮮労働党計画財政部長が、一昨年に平壌(ピョンヤン)で公開銃殺されたと言われる。
この例のように、成功すればその「功は金正恩」、失敗すれば「その責任は朴南基」というやり方で、粛清・事態処理が行われる。
今回のミサイル発射実験失敗は時あたかも、政権確立の途上で暗闘(内部権力闘争)が行われている最中。ミサイル発射実験失敗が、まるで火に油を注ぐがごとく、暗闘を激化させることだろう。
その結果として多くの「負け組」が濡れ衣を着せられて葬りさられるであろう。
この暗闘が短期間に収束すればよいが、そうではなく混迷を深め、長期にわたる場合は、金正恩体制そのものが揺らぎ、最悪の事態としては内部崩壊につながる、という見方も排除できないだろう。