最近、中国でハリウッド映画さながらの事件が起きた。
2月6日、重慶市の副市長、公安局長を務める王立軍が、四川省成都市にある米国総領事館に駆け込んだ。そのタイミングは習近平・国家副主席が訪米する直前だった。なぜ、重慶市の副市長が米国総領事館に駆け込んだのだろうか。
まず思い浮かぶのは、政治亡命のためではないかということだ。しかし、その後の動きはやや不可解な展開を見せた。
米国は王の亡命を受け入れず、彼を北京の当局者に引き渡した。民主主義と人権重視を標榜する米国が、なぜこんな乱暴なことをするのだろうか。
王は、重慶市共産党書記である薄煕来の側近だった。薄は重慶の治安を改善するために遼寧省から王を呼び寄せ、マフィア撲滅キャンペーンを展開した。2人はまさに二人三脚の関係だった。
だが、実は王が米国総領事館に駆け込んだ原因は、薄に殺されるのを恐れているからではないかと言われている。
インターネット上には、重慶にある解放軍の病院が発行した王の診断書が暴露されている。それによると、王は深刻な鬱を患っているとのことだ。もしも米国総領事館に逃げ込まなければ、自殺と見せかけて殺されてもおかしくない。
一体、どんな背景があってこのような事件が起きたのだろうか。
薄煕来は王立軍を消そうとしたのか?
王が米国総領事館から北京当局に引き渡されたあと、薄は「人を見る目に問題があった」と自らの任命責任を認めた。その後、薄は共産党から役職を解任された。
しかし、共産党体制では、副市長は党の組織部門が身辺調査を行ってから任命している。党の書記が任命責任を問われて解任されることは異例なことである。