この数日間、重慶市公安局長関連の報道が目立つ。それにしても、このメディアの盛り上がり方は何なのだろう。ご本人たちは自覚しておられないだろうが、傍から見るとかなり不思議な光景である。

 「ご本人たち」とは世界中の中国ウォッチャーのこと、今回は中国から流れてきた重慶市公安局長失脚(?)報道を取り上げる。(文中敬称略)

公安局長人事報道

大都市・重慶で反日デモ、中国

重慶市で起きた反日デモ(2010年)〔AFPBB News

 本稿を書き始めた2月8日で重慶市元公安局長人事に関する報道見出しを集めてみたら、こんな具合になった。

●暴力団一掃の公安局長交代 昇進見込み?重慶市トップの腹心(2月3日)
●暴力団一掃主導 重慶副市長、失脚か(2月3日)
●暴力団摘発の公安局長交代=薄熙来氏に打撃か―中国重慶市(2月7日)
●権力中枢の不快感か、団派の巻き返しか?(2月8日)
●側近が「休養」、拘束情報も=政治局常務委入りに影響か―中国・重慶書記(2月8日)

 重慶市副市長兼公安局長だった王立軍が公安局長の職を解かれ、教育・科学技術・環境保護担当の副市長となったのは2月2日。

 その時点では日本の一部メディアが「暴力団摘発の功労者である王氏の将来の昇進を見込み、副市長に専念させるのが目的」などという的外れの記事を配信していた。

 ところが、同氏の「休養」が正式に発表された2月8日以降、世界のメディアは、薄熙来重慶市党書記の側近であった王立軍の「突然の交代は、秋の党大会で政治局常務委員会入りを狙う薄氏にとって打撃になる」との見方が大勢になっていく。

 ちなみに重慶市が微博(中国政府公認のミニブログ)上で、「王立軍副書記は、長期にわたる重労働により、精神が高度の緊張状態に陥って体調に異常をきたしたため、同意を得て休暇式治療を受け入れた」と発表した。