歴史は繰り返すものなのか。

 ジュラン、デミングという米国の偉大な先駆者から品質管理を教わった日本は、ものづくりの分野で世界を驚かせる発展を見せた。メード・イン・ジャパンと言えば安かろう悪かろうの代名詞だったものが、品質の高さを象徴する言葉になった。

 一方で、品質管理の生みの親である米国は日本にお株を奪われる形で製造業は衰退へ向かっていった。しかし、いまやその日本がかつての米国と同じ道を歩もうとしている。ものづくりの品質では中国など新興国にお株を奪われ始めたのだ。

 このシリーズ3回目では、中国に長年にわたってシックスシグマ普及の支援をしてきた元東芝の石山一雄さんをお招きし、急速に品質を向上させている中国の現状を聞いた。併せて、追いつき追い越されそうな日本が今後取るべき道を議論した。(川嶋諭)

日本なら10人しか集まらないセミナーに600人が押し寄せる

石山 一雄(いしやま・かずお)氏 中国質量協会 シックスシグマ推進顧問、シックスシグマ推進委員会 専門家委員、ISO TC69/SC7(Six Sigma)国内委員会委員。シックスシグマ・マスターブラックベルト資格者(撮影:前田せいめい、以下同)

川嶋 石山さんは、中国でシックスシグマ(Six Sigma)導入を推進している中国質量協会の専門家委員でいらっしゃいます。東芝時代から今に至る経緯をお教えいただけますか。

石山 東芝は97年度業績が前年に比べ大幅に減益だったことから、当時社長だった西室(泰三)さんが危機感を持ち、全社一丸となって東芝を変革しなければならないと考えて1999年度から「経営変革2001運動」をスタートさせました。その中心の手法としてシックスシグマが導入されたのです。

 社長直轄の経営変革推進本部の一員として、私は当初からこれに関わりました。東芝グループ内の推進を軌道に乗せたところで、これを外部にも展開しようと、2002年に東芝シグマコンサルティングという会社を作った。

 同時に私もそちらに移りまして、以来、2009年の完全退職まで、グループ外の企業に向けたシックスシグマ導入のコンサルティングや教育などを手がけてきました。

川嶋 同じくシックスシグマをベースにしたコンサルティングをやっていらっしゃる眞木さんとは競合になるわけですね。


眞木 いやいや。狭い世界ですし、以前から顔見知りですから、ライバルというより同志のようなものです。


川嶋 中国との関わりは?