前回は諸外国のグローバル人材戦略について、受け入れと送り出しの両面からご紹介しました。各国がしたたかに人材獲得・人材育成に取り組む中で、日本でも少しずつですが、機運を感じる動きが出てきました。

日本の大学にとって大きな転換期

 東京大学が秋入学への全面移行計画を発表したことに続き、一橋大学では入学時期は春のままで授業開始を秋にする制度を検討し始めたり、早稲田大学では同じく春入学のまま、1年を4学期に分けるクオーター制の導入を提起しています。もちろん各案にはメリットと課題はあります。

東大秋入学、学内懇談会が提言

秋入学への全面移行を発表した東京大学(写真は東大の合格発表の様子)〔AFPBB News

 例えば、東大方式では、世界で大多数が採用する秋入学の学校との交流が推進される点や入学前の課外活動による人格形成が期待される一方で、4月入社の慣行にそぐわないため企業の理解が必要となります。

 一橋大方式では、入学・卒業時期は春のままで海外の秋入学に対応できるため、社会の慣習を変える必要なく大学のグローバル化を推進できる一方で、実質的な学部教育を7学期で終了させるためのプログラムが必要となります。

 早大方式では、学期の区切りが増えるため、海外からの留学生を受け入れやすくなるとともに日本の学生も留学しやすくなりますが、科目登録や成績評価など教職員の負担が増えます。

 これらの大学は、文部科学省の国際化拠点整備事業(通称「グローバル30」)で選定された13の大学のうちの3校ですが、今後は他の大学でも独自の案が提唱され議論が活発になることが予想されます。

優れた留学生の獲得や戦略的な国際連携により、大学の国際競争力の強化、留学生等に魅力的な水準の教育等を提供するとともに、留学生と切磋琢磨する環境の中で国際的に活躍できる高度な人材を養成することを目的に、英語で受講・卒業できるコースの創設や、国際公募による優秀な教員の採用等を推進する大学を30校選定し支援するというもの。<参照:「平成21年度 国際化拠点整備事業公募要領(PDF)」文部科学省>

外国人の受け入れと日本人の送り出しに係る予算の乖離

 また、予算に関してですが、受け入れに関する文科省の平成24年度予算案は約332億円です。主な内訳は「外国人留学生奨学金制度」277億円、「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(先述の「グローバル30」改め)26億円などです。

 それに対し送り出しに関する平成24年度の予算案は、約81億円です。主な内訳は大学における「グローバル人材育成推進事業」50億円(平成24年度新規)、「日本人学生の海外留学の推進」31億円です。