欧州危機の鎮静化、米国経済指標の顕著な好転を背景に、米国株式はリーマン・ショック後の高値を更新した。それにより、2009年以降の株式上昇トレンドが続いていることが確かになった。潤沢な余剰資金が株式投資に押し出されてきたのである。

 この株高は単なる金融相場とは違う。企業業績も好調なので、「金融・業績複合相場」と言う方が的を射ている。

 その根源には、空前の企業収益と空前の低金利の結果、空前に拡大した利ザヤ(リスクプレミアム)がある。

 米国企業利益は過去最高でありながら株式は低迷していたため、株式益回りは8%(=PER12.5倍)と大きく上昇している。この潤沢な利益を米国企業は株主に手厚く還元している。企業は株価に対して2%の配当を支払っているが、加えて株価に対して年率4%の自社株買いをしている。合計株価に対して年率6%の現金還元を、企業は投資家に対して行っているのである。この「配当+自社株買い利回り」はリーマン・ショック前のブーム時を除けば史上空前である。

 他方、昨年秋以降、米国債の実質金利がマイナスとなっているが、それは米国債保有者の資産価値がインフレで目減りしていることを示している。

 米国では株主になれば企業からの現金還元だけで6%のリターン(株主が企業に預けている留保利益を加えれば8%のリターン)があるのに、国債を所有すれば、実質リターンはマイナスという極端なギャップが存在している。

 名目のリターンを比較すると、2%の国債金利に対して、株式配当1倍、配当+自社株買いは3倍、株式益回り(配当+自社株買い+企業留保利益)は4倍とギャップは極端である。FRBがこのギャップを埋めようと努力している時に、投資家が泰然としていられないのは当然だろう。

 この企業利益の株式を通した配分は、資産効果、配当収入等を通して家計所得を潤し、消費回復を推進する。

 米国の家計所得に占める金利・配当・賃貸料等の資産所得は著しく大きい。2011年第4四半期の家計労働所得(福利厚生を除く純賃金)は6.7兆ドル、それに対して資産所得(金利・配当・賃貸料)は2.2兆ドルとなっている。

 この米国の潤沢な資産所得は、「企業収益回復 → 株高や配当増加による家計所得上昇 → 消費増加」というチャンネルの有効性を示唆する。ちなみに日本の家計所得に占める資産所得は4%と極端に低く、日本では企業収益が消費に結びつくチャンネルは著しく弱い。