エコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2011」リポート、第5回の今日は「財政再建に向けて」をテーマに行われた議論をお届けする。

 パネリストは自民党シャドウ・キャビネット官房副長官の林芳正氏、オリエンタル・エコノミスト・アラート編集長のリチャード・カッツ氏、東京大学大学院経済学研究科授の井堀利宏氏、メリルリンチ日本証券調査部のチーフエコノミスト吉川雅幸氏。司会はエコノミスト誌東京特派員のケネス・クキエ氏。

手を打たなければ7~8年で危機到来の可能性も

司会 まず、自民党の林先生にお聞きします。日本の財政赤字はどの程度深刻であり、それに対して何をすべきなのでしょうか。

自由民主党シャドウ・キャビネット官房副長官、林芳正氏 (写真提供: エコノミスト・カンファレンス、以下同)

 自民党では、2011年春に「X-dayプロジェクト」を設置し、国債暴落の可能性とその対策について市場関係者や学識者などから幅広くヒアリングを行い、報告書をまとめました。

  野党として財政赤字・財政危機の問題を政府に警告するのが狙いで、報告書では今後7~8年ぐらいの間にX-dayが到来する可能性にも言及しています。政党がそこまで踏み込んだことを言うのは恐らく初めてですが、我々は、それほど強い危機感を持っているのです。

 社会保障、防衛、文教、公共事業など予算額の大きな項目に関しては、5年間でどのように削減するか、あらかじめ具体的な数字を示して、インパクトを抑えながら実現していく必要があると考えています。

 東日本大震災の復興については、4月から特別会計を作り区分経理します。日本は震災によって物的・精神的に大きなダメージを受けましたが、債務・財政面でのインパクトはそれほど大きくありません。

 復興に必要な費用は10年間で最大で10兆~20兆円程度ですが、実は、国債市場での1カ月の発行額とほぼ同じなのです。財政全体に与える影響はそんなに頭を抱え込むほど大きいものではないと認識しておく必要があります。

 自民党が与党の時代には、予算や税制で成長戦略を裏打ちする政策を常に考えていました。民主党政権では論文のような成長戦略が出てくるばかりで、それを実現するためにどういう補助金を出すのか、どういう努力をするのかという具体的な施策が付随していません。