マット安川 今回のゲストは評論家・宮崎正弘さん。中国経済の鈍化や国内情勢をうかがうとともに、ポスト金正日の北朝鮮、2012年早々に予定されている台湾の総統選挙などの展望をお聞きしました。

ネットによる情報化が中国当局の暴動対応を変えた

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『中国が日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店)『自壊する中国 ネット革命の連鎖』(文芸社)『震災大不況で日本に何が起こるのか』(徳間書店)『オレ様国家 中国の常識』(新潮社)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 中国で暴動が頻発しています。今一番注目されているのは、広州に近い烏坎という村で起きたそれです。

 共産党幹部が勝手に農地を売り、マンションやリゾート施設、ゴルフコースなどを造ろうとした。しかし雀の涙程度の補償金しか出ないことにみんなが怒って、幹線道路を封鎖する騒ぎになりました。

 警官隊が入って60人ほど拘束されたんですが、事態はそこから急展開。指導者の1人が取り調べ中に死んでしまったんです。日頃から心臓に持病のある人だったという当局の説明を受けて、暴動はさらに拡大しました。

 今までなら軍隊が出て鉄砲をバンバン撃っておしまいでしたが、さすがにもうそんなことはできません。農民だって携帯電話を使って写真や動画を撮れるし、それをネットで送れる時代ですからね。

 結局、当局は農民の要求をかなり受け入れました。指導者の遺体を返し、土地の売却交渉は村人の代表も同席させてやり直す・・・と。かつてなかったことです。

 その情報が伝わったからなのか、今度はそこから150キロぐらい離れた汕頭市というところで3万人規模のデモが起こりました。ここでも妥協せざるをえないでしょう。

 背景にはいろんな要素が絡んでいます。来年の共産党大会に向けて、広州、重慶、大連という各エリアのボスたちが繰り広げている権力闘争が影響してのことでもある。

 ともあれ、抗議行動に対する当局の対処の仕方が今までのパターンとは違ってきていることは注目に値します。民衆の抗議行動を容認し要求を認めるところまで軟化しているんです。

中国経済は末期症状。来年夏には人民元暴落も?

 日本の新聞もようやく中国の不動産バブル崩壊について書き始めました。しかし内容は必ずしも正しくない。不動産価格が上海で25%、北京で20%下落したといいますが、実際には40%ぐらい下がっていると思われます。