日本人は経済的な危機感を持つべき

竹中平蔵(たけなか・へいぞう) 1951年和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒。日本開発銀行、大蔵省財政金融研究所主任研究官、ハーバード大学客員准教授、大阪

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──日本人に勉強が必要な理由として、国力の低下を挙げています。

竹中 今、日本人に求められていることが大きく2つあります。まず、経済的な危機感を持つことです。日本は経済大国だから大丈夫だなんていまだに思っている人がいるけど、決してそんなことはない。世界に目を転じると、どの国も必死なんです。次から次へといろいろなことが起きて、すさまじいグローバル競争が繰り広げられている。その中で、世界の人たちは必死になっています。日本は安穏としていられないんですよ。

 15年ほど前、日本人の1人あたりの所得は世界で第2位でした。それが今は18位です。先進国30カ国の中だと、もはや下位グループ。そういう状況になっているんです。日本人はもっと危機感を持たなければなりませんよね。

 もう1つは、世界の国が普通にやっていることは日本でもやっていく必要があるということ。例えば私が大臣を務めた小泉内閣は、不良債権処理と郵政民営化を行いました。賛否をめぐって日本で大騒ぎになりましたけど、世界では全然特別なことではありません。郵政民営化をやった先進的な事例はいくつかあるし、不良債権処理にしても不良債権があった国はみんなやっていることです。

 現在の原油高への対応にしても、日本では「政府がいろいろな業界の面倒を見るべきだ」という論調になっていますが、そんな国は他にないですよ。日本で言われていることは、残念ながら世界から遊離しているんです。

 経済的な危機感を持って、やるべきことをやっていく。そうなると、日本人はやはりもっと勉強して、厳しい状況にいかに対処していくかを考えていかなければなりません。

──日本人は勉強が足りないのでしょうか。

竹中 バブル崩壊後の「失われた10年」を見ると、日本の人材はほかの国に比べて明らかに劣化したと言わざるを得ません。英国の教育メディアが行っている有名な世界大学ランキングがあります。2008年度は日本の大学の最高位が東京大学の17位でした。トップ100の中に、日本の大学は東大をはじめ4校しか入っていないんです。そのランキングでは中国の大学も100位以内に4校入っている。日本はすでに中国に追いつかれているんですよ。

 日本の大学は、「18歳から22歳ぐらいまでの若者が楽しい青春時代を過ごす場所」という雰囲気がありますよね。私が米国の大学に行って一番驚かされたのは、大人がたくさんいることでした。米国の大学では、学生、大学院生として登録されている人の中で25歳以上の人が4割、35歳以上の人が17~18%を占めています。日本とは大違いなんです。