4月10日、中国海軍のキロ級潜水艦2隻やソブレメンヌイ級駆逐艦2隻、フリゲート3隻など計10隻の艦艇が、沖縄本島の西南西約140キロの公海上を東シナ海から太平洋に向け通過した。

 ちょうど米国での核安全保障サミット開催に合わせた米中首脳会談の直前に当たり、かつ、沖縄の普天間基地移設を巡り日米同盟関係の混迷が深まる中での出来事である。わが国の防衛省も注目しているこの前例のない中国海軍のデモンストレーションをどう見るべきか、一考に値する。

 もとよりこうした中国海軍の行動について、中国側からは何の説明もない。その行動の軍事的意味を探るには、この艦隊が太平洋でどのような活動を展開するかを見た上でなければ正確な分析はできない。

 しかしながら、沖縄本島と宮古島との間に広がる幅350キロの宮古海峡のほぼ中央の公海部分を、潜水艦を浮上させたまま通過し、太平洋に出るという行動そのものが「これ見よがし」のデモンストレーションであり、まさに「見せる」ことに意味を持たせた行動に他ならない。

 誰に見せたかったのかは言うまでもない。日本であり、米国であり、台湾だ。では、見せることによってどのようなメッセージを伝えたかったのか。中国側の説明がない以上、想像をたくましくして推測するしかない。

いつでも太平洋に出られることの誇示?

 第1に考えられることは、中国海軍が日本列島から沖縄、台湾、フィリピンをつなぐ第1列島線の内側に閉じこもっているわけではなく、いつでも太平洋にアクセスできることを誇示したかったということだろう。

 2008年10月にも中国海軍のソブレメンヌイ級駆逐艦1隻とフリゲート2隻、補給艦1隻からなる4隻の艦隊が日本海から宗谷海峡を抜けて太平洋に出たことがある。今回はそれ以来の活動と言うことができる。

 さらに言えば、東シナ海を守備範囲とする中国の東海艦隊にとって、宮古海峡は最も至近距離で太平洋へ抜けられる出口でもある。

 2000年代に入ってから、中国海軍は調査船を日本近海から西太平洋まで繰り出し、潜水艦の活動のための情報を含め、様々なデータを蓄積してきたという実績がある。いまや第1列島線を越えて、その活動範囲の太平洋への拡大を現実のものとしつつある。

台湾の周辺に米海軍を近寄らせない手段とは

 第2は潜水艦戦力のアピールである。

 今年2月に公表された米軍の「4年ごとの国防見直し報告(QDR2010)」が強調しているように、米国の国防重点領域の中には、「アクセス拒否環境」での攻撃を抑止し、打倒することが位置づけられている。