前書きが長い。本題に入るまでに15ページも費やしている。こんなに前書きの長いビジネス書はあまり見たことがない。しかしその長さに著者の並々ならぬ問題意識の深さを感じた。

 その問いかけは重い。多くの人が人生の大半を費やす仕事と、読者がどう向き合ってきたかを問うているからだ。その問題意識にピンとこない読者はこの本の中身を正視できないかもしれない。そういうふるい分けのためにこの前書きがあるような気がする。

 そしてふるい落とされた読者こそがおそらくはこの書で指摘されているバカなリーダー、ないしは、そんなリーダーに振り回されつつもしがみつくほかない哀しい人々なのかもしれない。

刺激的なタイトルに隠されたバランスの取れた知性

 山本一郎というよりは「切込隊長」と呼んだ方がまだ通りがいいかもしれない。ネットではかなりの有名人である。

 かつてはこの「切込隊長」の名でブログを書き(現在は本名の山本一郎を名乗っている)、ネットビジネスやらSNSやら、世の中が手放しでもてはやすものについて、いったいどこで仕入れてきたのか感心するほどの裏情報も持ち出しつつ、慇懃無礼を通り越した独特な丁寧口調で小気味良くばっさばっさと斬り捨てていた。

 それでいて、不快感をもよおすような一線は越えない。初期の活躍ぶりは2005年の著書『けなす技術』に集大成されている。手のひらに載せた事物を完膚なきまでにこけ下ろす腕は本邦随一だ。

 『けなす技術』にも象徴されるように山本一郎の著作には刺激的なタイトルが多い。過去の著作にも『ニッポン経営者列伝 嗚呼、香ばしき人々』『“俺様国家”中国の大経済』 『ネットビジネスの終わり』等々。

 サブカルチャーを扱うことが多かったこともあってか、ともすればまっとうな論壇とは一線を画したアングラのカリスマのような評価を受けることもある。