最近は、日本の(「iPhone」以外の)携帯電話を「ガラケー」と呼ぶそうだ。「ガラパゴスケータイ」の略である。
ガラパゴスというのは大陸から隔離されて生物が独自の進化を遂げた島の名前だが、日本の携帯電話も独自の進化を遂げ、世界一デラックスだが、どこにも輸出できない。1台7万~8万円と世界でも群を抜いて高いからだ。
日本では、これを通信業者がすべて買い上げて、小売店に卸す際に「販売奨励金」を出し、小売店は「1円ケータイ」などとして売っていた。この見かけ上の低価格は通信料金で回収される。しかし、利用者にはこのからくりが分からない。そのため、端末が高機能・高価格の製品に片寄り、世界市場で競争できる低価格製品がなくなった。
他方、海外の端末メーカーは、テレビやカーナビまでついている「ガラパゴス規格」に合わせることが困難になり、ほとんど撤退してしまった。この結果、日本の携帯電話業界は孤立し、2008年の統計では、ノキア(フィンランド)の世界市場シェアが38.6%を占めるのに対して、日本メーカーは8社合わせて10%にも満たず、三洋電機と三菱電機が撤退した。
周波数帯が違うので海外で使えない
携帯電話のようなマイクロエレクトロニクスは、本来は日本の電機メーカーが最も強い部門だ。それが、なぜこのような惨状になったのか。きっかけは、第2世代(2G)の携帯電話で「PDC」という日本独自のガラパゴス規格を採用したことだ。
この時、欧州では「GSM」という統一規格が採用された。GSMでは、SIMカード(利用者を特定するカード)を取り替えれば同じ端末をどこの国でも使えるようになる。GSMを採用した結果、欧州では1つの端末が全欧で使えるため規模の経済が大きくなり、各州バラバラの規格を採用した米国もしのいで、欧州メーカーが世界をリードしたのだ。
日本でも第3世代(3G)になって世界統一の標準規格となった。しかし、使う周波数が海外とは違うため、日本の端末が海外で売れない状況は変わらず、特に最大の成長市場である中国からすべての日本メーカーが撤退してしまった。