トヨタグループの結束は固い──。以前はそう言われた。
部品やユニットの開発費はトヨタ自動車が相応の負担をする。販売予想をはるかに下回るようなモデルは造らないから買い取り数は保証されている。だから、トヨタからのコスト要求には従った。
コストダウン術そのものが競争力になるから、サプライヤー(部品供給元)は必死でコストダウンの方法を探った。「トヨタと仕事をしていれば必ず有形無形の見返りがある」と、筆者は何度も聞いた。
しかし、現在はそうとも言い切れない。互いに相手を尊敬し合い、力を合わせて開発に精進するという「気持ち」は、サプライヤーの側から薄れていった。筆者にはそのように見える。なぜだろうか──。
自動車を造って売るのはそんなに儲かるものではない
今から20年ほど前、日本がバブル景気に酔っていた時、当時のVW(フォルクスワーゲン)社長、カール・H・ハーン氏にインタビューした。あとで分かったことは、インタビュー時点でスズキとの最初の提携を検討していたことだ。ハーン社長はこう言った。「自動車を造って売るという事業は、そんなに儲かるものではない」
同じ発言を聞くのは2度目だった。ダイムラー・ベンツ(当時)のエドツァルト・ロイター社長は、「良心的な自動車を造っていれば、売上高純利益率でせいぜい2~3%だ」と言っていた。
バブル景気のおかげで高額乗用車が飛ぶように売れていた日本では、トヨタが1990年6月期決算で4.5%の売上高純利益率に届いていた。この数値は、2004年3月期には6.7%へと上昇、同1.3%のVWを大きく引き離した。
リーマン・ショックの前年、トヨタは「すでに利益率ではゼネラル・モーターズ(GM)もダイムラーもかなわない」という企業になっていた。しかし、個々のモデルをつぶさに観察すると、以前のような、いかにもトヨタらしい「作り込み」が感じられない。高額モデルでも、一皮剥けば「部品のレベルは並」という印象だった。
トヨタは1991年にVWとの業務提携を拡大し、日本国内で「DUO」チャンネルを立ち上げてVW車の販売を行っていた。今般、スズキがフォルクスワーゲン(VW)と資本提携したことでトヨタとVWの関係は清算されることになったが、DUOが立ち上がってしばらくすると、トヨタの開発幹部からこんな話を聞いた。
「VW車は、それぞれの部品にお金がかかっている。ウチではとても使えない部品ばかりだ」
部品ランクを落とさずにコストを削減する「メガプラットホーム構想」
少々寂しい話だが、現場のエンジニア諸氏からも同様の話を聞いた。VWに限らず、ドイツ車はカネがかかっている。部品原価まで調べると、彼我の差があまりにも大きいことに愕然とした。
ボッシュ、ZF、コンチネンタルといったドイツ系サプライヤーを取材すると、技術幹部も現場のエンジニアもこう言う。