ソウル五輪の翌年、ベルリンの壁が崩壊し、冷戦は終結した〔AFPBB News〕
残り953文字
W杯日韓大会の翌年、米軍主導の多国籍軍の侵攻によってイラクのフセイン政権は転覆した〔AFPBB News〕
工場落成を祝う市民集会に異例の出席をした北朝鮮の金正日総書記。デノミに伴う経済混乱で不満が高まっていることへの配慮か?〔AFPBB News〕
一連の事象を「単なる偶然」と片付けることもできる。しかし、朝鮮戦争で分断された2つの国家の片方である韓国で大きな国際行事が開かれる事実は、重く受け止めるべきだ。
たとえばソウル五輪。東西冷戦構造の中でソ連をはじめとする東側諸国が「平和の祭典」たる五輪に参加した。それを契機に、北朝鮮とソ連などとの亀裂は決定的になったが、それは1988年時点で東側陣営の体制は盤石でなかったことを意味する。そもそも、東西の勢力が拮抗した状態であれば、ソウルでの五輪開催は実現しなかっただろう。
現下の朝鮮半島情勢を見れば、北朝鮮が経済混迷の度を深めているのは間違いない。前出の韓国政府元高官は「韓国と北朝鮮の歩んだ道の、どちらが正しかったか。G20はそれを確認する場になるだろう」と語る。
2009年11月のデノミネーション(通貨呼称単位の変更)は北朝鮮当局の狙い通りには運ばず、混乱を招来しただけのようだ。日本や韓国での報道によれば、北朝鮮ではデノミ後の物価の急騰などで餓死者が出ている。
また金総書記は3月6日、工場完工を祝って北東部の咸興市で開かれた大衆大会に出席し、それが北朝鮮メディアで当日、報道された。金総書記が民衆の会合に顔を出すのは極めて異例だ。
韓国の情報関係者は「国内の不満を宥めるのが目的」との見方を示した後、「(1989年に権力の座から引きずり下ろされた)ルーマニアのチャウシェスク大統領と同様の運命になるのではないか」と指摘する。それらに加え、北朝鮮が2012年に向けて権力継承の準備を間違いなく進めることも勘案すれば、今後、北朝鮮をめぐって何事かが起きる公算が大きい。


