3月上旬、2010年になって初めて韓国を訪問すると、ソウルには高揚感が溢れていた。その主要なファクターは2つ。G20(20カ国・地域)首脳会議が11月にソウルで開催されることと、バンクーバー五輪で「国民の妹」金妍児(キム・ヨナ)が浅田真央らを寄せ付けずに圧勝し、金メダルを獲得したことだ。(文中敬称略)

五輪、W杯後に国際情勢が激動

浅田は銀メダル キム・ヨナが金、バンクーバー冬季五輪

「国民の妹」の勝利は、ソウルの街に高揚感をもたらした〔AFPBB News

 「ようやく『一流国』として認められたということだ」──。韓国政府元高官は、G20首脳会議のソウル開催を感慨深げに語る。同会合は、2008年11月のワシントンを皮切りに、ロンドン、ピッツバーグで開催され、6月にG8(主要8カ国)議長国であるカナダのトロントで開催予定の後、アジアで初めて韓国が会場となる。世界の経済・金融を議論する場として重要性が高まる国際会議の誘致に、韓国政府当局者は「韓国の歴史に残るだろう」と、やや興奮気味だ。

 韓国における過去の大型国際行事といえば、1988年のソウル五輪と2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会だ。それらを振り返ると「韓国で大型行事があると、国際情勢が激動する」という不思議な因縁が浮かび上がってくる。

 ソウル五輪の翌年1989年には、中国の天安門事件で中国と西側諸国の関係が一時、冷え込んだ。一方でベルリンの壁崩壊など、第2次世界大戦後の「資本主義VS社会主義」の枠組みを揺るがす事態が続発し、12月のマルタでの米ソ首脳会談で冷戦終結が宣言された。

G20金融サミット、共同宣言を採択して閉幕

2009年9月米ピッツバーグで開催されたG20首脳会議。10年11月、アジアでは初のソウル会合が行われる〔AFPBB News

 W杯開催後の2002年の秋以降では、当時の小泉純一郎首相が平壌を訪問して金正日(キム・ジョンイル)総書記と初の首脳会談に臨んだかと思えば、高濃縮ウランを用いた北朝鮮の新たな核開発計画を米国が暴露。翌2003年には、中国を議長国とし米、南北朝鮮、日、露をメンバーとする6カ国協議が発足。また中東では、ブッシュ米政権がイラクへの軍事攻撃を断行、フセイン政権を瓦解させた。