早いもので2011年も残り2カ月を切った。毎年この時期には中国に関するUSCC(米中経済・安全保障調査委員会)の対議会年次報告書が発表される。今年は11月16日に2011年度版 が公表され、日本のメディアでもそのおどろおどろしい内容の一部が報じられた。
例えば、「中国軍は日本列島やフィリピンを含む西太平洋地域の支配権掌握を目指す『領域支配戦略』を進め、米軍に対抗するため奇襲による先制攻撃能力を手にしつつある」とか、「米国の2基の衛星が2007年と2008年に中国からとみられるハッキング攻撃を繰り返し受けていた」といった具合だ。
こうした内容も、実は決して目新しいものではない。同報告書は全体で406ページもある大部だが、恐らくすべてに目を通した日本人記者はいないだろう。
そこで今回、天邪鬼な筆者としては、同報告書の興味深い内容のうちの「報じられなかった部分」をピックアップしてご紹介することにしたい。
USCCとは何か
「USCC」とは「U.S.-China Economic and Security Review Commission」の略だ。日本メディアでは「米中経済安全保障見直し委員会」などと訳されるが、これは誤解を招く訳語である。
英語を読めば自明だが、そもそもこの委員会は米中間の「経済安保」を「見直す」委員会ではないのだ。
USCCは2000年10月30日、米国法によって設置された。毎年米議会に対し、経済分野と安全保障分野における中国の動きを調査(review)し報告することが義務付けられている。
メンバーは超党派ということだが、実際には中国に手厳しい議員や専門家も年次報告書作成に携わっているようだ。
年次報告書の発表は今年で9回目。最近では、第1部で米中貿易・経済関係、第2部で中国軍事活動、第3部で中国のアジア政策、第4部で中国の情報規制・インターネット状況などを取り上げてきたが、それでも目玉は毎年微妙に異なっている。