政権交代が実現しても、都市部の「待機児童」問題の解決策が一向に示されない。与党となった民主党はしがらみがないはずだが、自公政権時代から続く保育行政にメスを入れようとしない。

 著しい女性の社会進出にもかかわらず、これまで族議員や厚生労働省、保育業界団体が時代遅れの政策を続けていた。児童福祉法を盾にして「保育の質の低下」を理由に規制強化し、新規参入の障壁を高くしてきたのだ。

 一方、民主党も政治主導を掲げながら、厚労省(保育所)と文部科学省(幼稚園)の縄張り争いを未だ解決できない。監督官庁の「幼保一元化」を実現しなければ、幼保一体型「こども園」などの実質的な増加にはつながらない。

 少子化・待機児童問題を解決するには、先ずは既得権優先から脱却しなくてはならない。そして、利害関係のないエコノミストを含む第三者機関でバウチャー制度導入などを視野に入れ、税金の効率的配分を考えながら、政策目標を達成する方法を早急に検討する必要がある。

自民党族議員+保育業界団体+厚労省=高い参入障壁

 日本保育協会や全国保育園協議会連盟などの業界団体は、自民党の有力支持団体として族議員と太いパイプを構築。厚労省の部会などに参加しながら、保育政策に多大な影響力を及ぼしてきた。

 公的補助を受け取る当事者である業界団体の主張・主義がまかり通るから、既得権を守るために高い参入障壁が出来上がった。だから、「保育所の絶対数を増やしてほしい」という社会の切実なニーズは無視されてきたのだ。

 例えば、2000年に営利法人やNPO(非営利法人)による保育業参入が形式上認められたが、保育の質の向上に直接結びつかない規則(特別な会計基準や運用費の使用制限など)を設け、新規参入を最小限にとどめてきた。

 また、子供の一時預かり事業に既存の企業やNPOなど民間保育所も参入可能な改正児童福祉法が2008年に成立した。だが、新たに義務付けられた規制(外部の評議員会の設置や保育所とは別の経理処理など)の負担に耐え切れず、民間保育所の1割が撤退している。

 業界団体と族議員は「参入障壁を高くすることが保育の質を保つ手段だ」と声高に主張し、人件費などの負担増をあえて課した。すなわち、都市部の待機児童問題を解決しようという意思はほとんど見られなかったのである。