それから、世界は変化した。生産も消費も、成長の中心は新興国になった。製造業では、かつての米国企業のように、今、世界中で日本企業が押しまくられている。

 杉だけの人工林よりも、生物多様性に満ちた自然林の方が強い。生物の世界では、大きいから、頭脳が発達しているから、といって生存できるわけではない。環境の変化を成長要因に変化させなければ、生き残れない。

米国一辺倒でない経済の多様性が求められている

 少子高齢化が進むこと、エネルギーや食料を自給自足しなくてはならない時代が来ること、中国やインドで環境問題が深刻なこと、日本の医療が過剰なほどの高度な設備を抱えていること、中国に海外旅行ブームが起きていること・・・。

 心の不安を抱えた人が多いこと、老後の年金の資産が不安なこと、クリーンテックの技術の4割が日本にあるのに事業化できないこと、農業に後継者が見つからないこと、漁業資源が減っていること、子供が将来きちんとした仕事に就けるか不安なこと・・・。

 こうした環境の変化は、すべて経済の成長要因に転化できる。大きな危機があるほど、それを解決しようという強い意志が働き、巨大な資金が動かせるからである。世界経済の参加者が飛躍的に増えたのだから、日本を取り巻く環境の変化も複雑で多様になった。

 当たり前になったと言ってもいい。米国だけを見ていればいいという時代が特殊だったのだ。

 多様性に富んだ構造に転換すれば、日本経済は復活し成長する。大企業だけでなく、中小企業。企業でさえなく、組合や家族や個人。日本人だけでなく外国人も。

 製造業だけでなく、農業も、伝統文化も、サブカルチャーも、観光も、芸術も、工芸も、環境も、学術も、美も、音楽も、病院も、学校も、お寺も、美術館も、癒やしも・・・、もちろん、技術も科学も。

 あらゆる職種、あらゆる仕事。お客さんは、国内も、世界中も。

 そうした経済多様性は、国土の多様性からしか生まれない。そこに日本経済の最大の成長要素が秘められている。理由についてはまた語ることにしたい。それを理解すれば、高速道路無料化をその一部とする、国土交通政策の抜本的変更が不可欠であることも理解されるだろう。