マット安川 今回のゲストは約2年半ぶりのご出演となる経済学博士・小山和伸さん。侃々諤々のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題について、日本が置かれている立場や経済の現状などをおうかがいしました。

TPPは平成の黒船。日本人の知力と勤勉さで乗り切れ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小山和伸/前田せいめい撮影小山 和伸(おやま・かずのぶ)氏
神奈川大学経済学部教授。経済学博士(東京大学)。横浜国立大学経営学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専門分野は、経営管理論、組織論、戦略論、技術経営論。著書に『戦略がなくなる日―戦略は立てた瞬間から時代遅れに』(主婦の友新書)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

小山 TPPに反対する人の気持ちはよく分かります。彼らの言うことは決して杞憂ではなく、確かに気をつけないと大変なことになる。

 ただ、最悪のシナリオばかりを力説して過度に不安を煽るのはどうか。入り口の議論すらしなくていいという論法には違和感があります。

 TPPは黒船のようなものだと、私は考えます。これをテコにして旧態依然たる状況を改めればいい。黒船が来ないと何もできないのかと言われますが、実際できなかったでしょう。その結果として今、日本は苦境に直面しているのです。

 日本は幕末、黒船の圧力に押されて国を開きました。そのせいで関税自主権を取り返すのに苦労したりと、大変な目に遭った。しかし、開国してわずか30年ほどで世界最強のバルチック艦隊を全滅させたのも事実です。

 当時は奇跡と言われたものですが、われわれにしてみれば奇跡なんてものじゃありません。日本人にはそれだけの知力と勤勉さがあるのです。

 例えば農産物の安全基準、弁護士をはじめとした資格制度の問題など、懸念材料はいろいろあります。しかしそれらは個々に交渉してルールを決めていけばいいことです。

 いずれにしても「見ざる・言わざる・聞かざる」よろしく、頭から布団をかぶって知らん顔をしていられる時代ではないのです。

農地の集約→大規模農法の導入で日本農業は危機を脱する

 TPPで日本の農業は壊滅的な打撃を受けると言われます。しかしそれがなくても、放っておいたら自然消滅しかねないほどの危機的状況にあるのではないでしょうか。食料自給率を上げようと言いながら、休耕地に補助金を出しているくらいですから。