千葉景子法相は2月24日、会社法の改正を法制審議会に諮問した。主要な改正点は、社外取締役の義務づけや従業員代表の監査役の選任義務、「親子上場」の禁止などだが、特に民主党が重視しているのが従業員の経営参加である。

 この改正案の原型となった「公開会社法」を制定するグループの中心になっている藤末健三参議院議員によれば「日本の株主保護は行き過ぎている」ので、労働者が経営に参加することによって労働分配率を高めるのが狙いだそうだ。

 しかし、彼の出しているデータは配当性向で、労働分配率とは関係ない。配当性向は企業が利益を投資に回すか配当に回すかを決めるだけで、配当を減らしても労働分配率は増えない。

 そもそも日本の株主の権利は強すぎるのだろうか。日本の企業は、銀行と取引先などが「持ち合い」によって互いの大株主となっているため、流動株が少なく、市場で株を買い集めてTOB(公開買い付け)を行うことが難しい。そのため企業買収も少なく、時価総額で世界の2.5%しかない。

 民主党は敵対的買収を封じるための買収防衛策などに熱心だが、持ち合いという鉄壁の防衛策を持つ日本の企業では、敵対的買収など起こり得ないのだ。

 このように古い企業を守るネットワークが堅固で、非効率的な経営によって資本が浪費されているため、収益が上がらない。日本の上場企業の平均株主資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)は、ほぼ一貫してアメリカの半分である。株価は、1980年代こそ高かったものの、90年代以降はピーク時の4分の1になったままだ。日本の株主は「強すぎる」どころか、世界で最も虐待されているのである。

始まった法人税の減税論議

 ところが鳩山由紀夫首相は、共産党の呼びかけに応えて企業の「内部留保」への課税を検討すると言明した。

 民主党が「弱者救済」を掲げ、支持基盤の労働組合のために労働分配率を上げると約束したのは、選挙戦術としてはやむを得なかったかもしれない。しかし政権党がそういう政策を実際に取ると、企業は海外に逃避して雇用は削減され、そのしわ寄せは結局、弱者に行くのだ。