北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)労働党総書記は2月16日、68回目(2010年1月13日付「北朝鮮、デノミは権力継承の環境整備か」で指摘したように、実は69回目)の誕生日を迎えた。健康不安説が消えない金総書記にとって、「後継問題は何よりも重大事。頭の中は、それでいっぱいのはず」(南北関係を担当する韓国統一相経験者)だが、依然として後継者を特定する決定的情報は見えてこない。
朝鮮中央テレビが13日放映した、水田で合唱する農民たちの映像(音声はなし)で、歌詞が書かれた紙に後継者を示唆する「金大将」の文字があった程度だ。
金総書記の3人の息子のうち、総書記の専属料理人を務めた藤本健二氏によって広く知られるようになった金ジョンウン氏(1983年生まれ)が後継者として「当確」との観測が、現時点では優勢だ。
ただ、彼より年長の正男氏(=ジョンナム71年生まれ)、正哲氏(=ジョンチョル81年生まれ)も、それぞれ「有力」「内定」と言われたことがある。今回は北朝鮮の後継問題を読み解く材料として、「長男」・正男氏が後継レースから脱落した背景を点検してみたい。
韓国政府、早くから「長男脱落」と判断
朝鮮社会は儒教道徳が支配する。後継者は長男だ──。北朝鮮ウォッチャーの一部は、このように主張してきた。となれば、金総書記の後を継ぐ「金王朝の3代目」は正男氏と考えるのが順当だ。2001年5月、日本への不法入国を図った正男氏が拘束され、大騒ぎになったのを記憶している読者も多いだろう。