最大の株価対策は「内閣退陣」?

次期米財務長官にガイトナーNY連銀総裁

手腕を高く評価されているガイトナーNY連銀総裁〔AFPBB News〕

残り0文字

麻生内閣の不支持50.6%、ホテルのバー通いに6割が批判的

政権交代は必然か…? 〔AFPBB News

 一方、米国経済の先行きは視界ゼロに近いのに、ニューヨーク市場の株価が11月末まで健闘してきたのは「オバマ効果」によるものだろう。

 次期大統領は、最前線で金融危機と闘う47歳のガイトナー・ニューヨーク連銀総裁を財務長官に抜擢。サマーズ元財務長官やボルカー元連邦準備制度理事会(FRB)議長らで脇を固める重厚人事を素早く発表し、政権発足前から市場との「対話」を始めた。ガイトナー氏と国際通貨基金(IMF)で仕事した関係者は「人の話を聞く達人。会議で各国の意見が対立していても、一定の結論に導く才能が光っていた」と次期長官の手腕を高く評価する。

 それに引きかえ、永田町の体たらく。「選挙管理内閣」として発足した経緯を都合よく忘れ、権力の座に固執する麻生太郎首相は解散権を封印。定額給付金をめぐり迷走を続け、「景気回復には各国でマクロ経済政策が必要」と国際公約したのに、第2次補正予算案の提出は先送り。大手新聞社のベテラン記者は「首相をはじめ永田町の発言が耐えられないほど軽く、政治部はお手上げだ」と嘆いている。

 11月28日の党首討論。首相は小沢一郎民主党代表の挑発にのることなく、無難な答弁に終始した。官邸や自民党執行部が新たな“舌禍事件”を恐れ、最高権力者の口にチャックをしたのだろう。

  しかし、お得意の“べらんめえ調”が消えると、稚拙な論理構成が浮き彫りになってしまう。例えば、現下の経済情勢に関して「100年に1度、金融災害という言葉が使われるほど大きな問題」という首相の認識は妥当だろう。それに続いて、「世界中が必死になっている中、政治空白をつくることは第2の経済大国としてすべきでない」と強調、金融危機を衆院解散先送りの理由にした。

  「空白」を回避するなら、第2次補正予算案を直ちに臨時国会へ提出すべきだろう。首相は「1次、2次、(2009年度)本予算と3段ロケットできちんとやっていく」と強調したが、これでは国会論戦というより学級会のレベルではないか。12月1日付日本経済新聞の世論調査では不支持が62%へ急増、支持の2倍に達している。

  米欧指導者が金融危機下で存在感を増すのとは対照的に、日本経済の最大リスクは「政治」ではないか。「内閣退陣が最大の株価対策」と、兜町で揶揄された森政権末期と似ている。「ポスト森」では小泉純一郎首相が長期政権を築いたが、今の内閣は徳川幕府の末期に近い。七転八倒の麻生首相が「15代将軍慶喜」を演じているなら、「江戸城開城=政権交代」は必然かもしれない。