日銀金融政策決定会合議事要旨(10月31日開催分)が27日に公表された。これより前、26日には、白川方明日銀総裁が金融調節に関する懇談会で25日に行った挨拶(講演)「短期金融市場の機能度と中央銀行の金融調節」の内容が公表された。これらの文書からは、「市場機能維持」の重要性を白川総裁が非常に重要視していることが、これまで以上に強く確認されたと言えるだろう。

日銀総裁「日本経済は当面停滞」 過度の利下げには警戒

市場機能を維持できるか〔AFPBB News

 決定会合議事要旨の内容を読む限り、市場機能に配慮すべきだという点について、ボードメンバーの間には共通認識があると受け止められる。すなわち、利下げの議論をするにあたって、「委員は、(1)引き下げ後の金利水準とスプレッドの両面において、短期金融市場の機能維持に十分配慮する必要があり、(2)補完貸付と補完当座預金制度の適用金利も含めて総合的に検討することが適当である、との認識を共有した」と、議事要旨には記されている。

 0.2%利下げに反対票を投じた委員が述べた反対理由は、「現下の政策課題は政策金利引き下げよりも、CP・GCレポ市場等の現状を踏まえた資金の目詰まり対策である」ことなどを掲げて利下げ自体に反対した水野委員のほかは、「市場機能を阻害するという理由だけでは(これまでと異なる0.2%幅は)説明が難しい」「今後、金利の変更幅について不確実性を高めるおそれがある」(須田委員)、「引き下げ幅が0.25%でも市場機能の維持は可能であるため、これまでと同様、0.25%刻みが適当」(中村委員)、「(0.2%利下げでは)政策の出し惜しみや更なる引き下げの余地ありといった印象を与えてしまう可能性がある」(亀崎委員)といったものだった。

 25日の白川総裁講演「短期金融市場の機能度と中央銀行の金融調節」は、短期市場のプロ向けの講演ということで、市場機能維持に向けた「決意表明」の色彩を帯びているものと、筆者は感じた。

 総裁は、量的緩和・ゼロ金利政策によって損なわれた市場機能の回復には「かなりの時間とコストがかかった」と、繰り返し強調。中央銀行にとって、金融システムの安定確保と短期金融市場の機能維持との間には「難しいトレードオフが発生し、難しい判断を求められます」「複雑な二面性を有しています」としつつも、現実に金融市場の機能が翌日物取引の段階に至るまで低下して信用収縮が発生しており、経済状態が厳しくなっている米欧と比較すれば、日本の状況はまだましだとみていることを示唆した上で、「市場機能を極力温存する努力も必要」「日本銀行としては金融市場における市場機能をできる限り維持していくことが重要だと考えています」として、次の3つの理由を列挙した。

(1)短期金融市場の機能が損なわれていると、必要な時に市場で資金調達ができなくなること
(2)効率的な資金配分の観点
(3)金融政策の波及メカニズムの確保という点

 上記(3)について白川総裁は、「市場機能が維持されていることは、金融政策が効果を発揮する上で重要な前提条件です」と述べ、「たとえ市場機能が低下している中にあっても、できるだけ市場を通じた取引を促進し、市場機能の復元力を温存していく努力が大切だ」とした。

 筆者は引き続き、日銀の政策金利引き下げは0.3%までであり、その先の金融緩和措置としては、ストレートな利下げではなく、市場機能への配慮をアピールすることのできる、「プラス金利付き量的緩和」であるという予想を維持している(よりテクニカルな話として、それより前に1998年実施の「臨時貸出制度」復活や適格担保の範囲拡大が一時的な措置として導入されるとみられる点については、すでにリポートした通りである。超過準備への0.1%付利が臨時措置としてすでに実行されており、その狙いは年末・年度末に向けた潤沢な資金供給を円滑に行うこととされている。

 日銀短観12 月調査の内容が一段と悪いものになるなどして、年度末にかけて日銀が追加的な緩和措置を行う必要に迫られる場合には、金融市場調節方針に「なお書き」を付加して、資金供給を一層強化し、翌日物加重平均が目標である「0.3%前後」を大きく下回る日が出てくることも容認するという、一種の低め誘導的な措置が取られることになるだろう。