6日のロンドン市場では、ポンドが大幅安となった。日本時間20時に発表された英中銀政策金利は予想通り。しかし、資産買い入れ枠が2750億ポンドに拡大され、ポンドが急落した。市場では一部に買い入れ枠の拡大予想もあったが、750億ポンドの追加拡大はサプライズだった。ポンドは発表を受けて売られ、ポンドドルは一時1.53割れへと200ポイント近く下げた。ポンド円も118円台後半から117円割れまで急落、戦後最安値に迫った。英中銀は声明で、世界経済の緊張が英景気回復を脅かしている、英国の基調成長率は鈍化した、銀行の資金調達環境の悪化で与信が逼迫する可能性、英経済の緩みが拡大、持続する可能性、と指摘しており、成長鈍化と金融不安への対応が希求される状況だったことが示された。インフレについては、5%以上に上昇するものの、来年には急低下する可能性、と述べた。
続いて20時45分過ぎに発表されたECB政策金利は大方の予想通り1.50%での据え置きだった。発表を受けて欧州株は上げ幅を縮小する反応。市場の一部には利下げの思惑も広がっていたことから失望売りもでているもよう。ユーロ相場は英中銀の発表後にポンドにつれ安となっていたが、ECBの据え置き後に一段安。ユーロドルは一時1.3268レベル、ユーロ円は101.70レベルへと下押しする反応を示した。ただ、買戻しもみられており、神経質な動きとなっている。この後の、トリシェECB総裁会見に注目が集まる。
◆欧州株堅調、資源国通貨買われるも欧州通貨伸び悩む
ロンドン市場序盤は、欧州株が堅調に推移して全般的にリスク選好ムードが広がった。英欧中銀の政策金利発表を控えて、大半は据え置き予想も一部には緩和策を打ち出すとの期待感がでていたもよう。ECBについては一部エコノミストが0.25%ないし0.50%の利下げを予想している。また、1年物の資金供給オペ再開の動きも予想されている。英中銀については、金利据え置き見通しでほぼコンセンサスができているが、資産買い入れ枠拡大を主張する動きが活発化するとの思惑も広がった。豪ドルやNZドルなどリスクに敏感なオセアニア通貨が堅調に推移している。バローゾ欧州委員長は、ユーロ圏諸国が協調して銀行の資本増強を実施することを提唱する、と述べており、銀行株の上昇を誘った。また、仏紙フィガロは、政府が仏銀行の株式取得など緊急計画を策定している、と報じたが、のちに仏政府はこれを否定した。ユーロには銀行支援策への思惑も支援材料となっていた。欧州株式市場では、銀行支援策をめぐる話題が多かった。ユーロドルは一時1.3399レベル、ユーロ円は102.70レベルまで買われた。豪ドルはそれ以上に堅調で、豪ドル/ドル0.97台半ば、豪ドル円74円台後半と、東京市場の安値水準からそれぞれ約100ポイント上昇した。ただ、英欧政策金利発表を控えて、ユーロやポンドは上昇を消す動きとなった。
◆スイスフランは急落する場面も、スイス紙のニュースで
ロンドン朝方にスイスフランが急落する場面があった。ユーロスイスは1.23台前半から一時1.2430近くまで急伸。ドルスイスも0.92台前半から一時0.93台乗せまで買われた。市場ではユーロスイスの水準をめぐるスイス紙のニュースが話題になっていた。スイス経済省経済管理局の局長は、スイスフランの対ユーロ相場について現在の1.20スイスフラン近辺よりも1.30-1.40フラン程度が望ましい、との見解を示した。中銀の介入は安定につながった、少なくとも企業は状況が悪化しないと確信が持てる、と述べている。市場にはユーロスイスの下限設定引き上げへの思惑が広がった。ただ、スイス中銀の実弾による介入の動きは観測されず、思惑のみに留まったようだ。ユーロスイスは1.23台前半へと戻した。
(Klugシニアアナリスト 松木秀明)