このところ振れの激しいもみ合いとなっていたニューヨークダウ工業株30種平均は、筆者が予想してきた通り、一段安となった。19日の終値は7997.28ドル(前日比▲427.47ドル)。終値での8000ドル割れは2003年3月31日以来のことである。

 ザラ場安値は7987.08ドルで、市場閉鎖の可能性も取り沙汰された10月10日に記録した7882.51ドルが視野に入ってきた。株価急落の材料になったのは、景気悪化深刻化とデフレ懸念の組み合わせ、すなわち「デフレスパイラル」への恐怖感である。

 まず、景気指標では、米10月の住宅着工戸数にインパクトがあった。米国ひいては世界景気悪化のそもそもの発端となった住宅バブル崩壊後の調整過程は、一段と深刻化している。住宅市場の悪化継続については、18日にNAHB(全米住宅建設業者協会)から発表された米11月の住宅市場指数が9(前月比▲5ポイント)となり、2カ月連続で過去最低水準を更新した時点ですでに確認されていたわけだが、官公庁統計でも非常に弱い数字が出てくることになった。

 10月の住宅着工戸数は、過去最低水準である年率79.1万戸に減少(前月比▲4.5%)。さらに、先行指標とされる建築許可件数が年率70.8万件(前月比▲12.0%)と急減し、景気悲観論を強めた。

 地域別の住宅販売動向では、このところ西部で押し目買いの動きから増加が見られていたため、住宅市場回復に向けた足がかりとして、メディアでもしばしば取り上げられていた(具体的な統計数値としては、米9月の中古住宅販売で西部は前月比+16.8%、米9月の新築住宅販売で西部は同+22.7%)。

 しかし、今回の住宅着工統計などを見ると、そうした動きはあくまで一過性のもので、その後の金融危機深刻化と信用収縮、マインド悪化を受けて、あっさり押し潰されてしまった可能性が高いと考えられる。

 10月の住宅着工は、西部では年率17.1万戸(前月比+7.5%)となったものの、前月に減少した分の反動増の範囲内。さらに、建築許可は、西部では年率15.5万件(前月比▲8.8%)で、4カ月連続の減少となっている。中古住宅の販売在庫がなお月間販売の9.9カ月分という過剰在庫を示す状態にある中で、住宅投資が回復してくるとは考え難い。

 さらに、住宅金融の状況を示す統計として、米抵当銀行協会による週次の住宅ローン申請指数がチェック対象になるわけだが、19日に発表された14日までの週の購入用指数は248.5(前週比▲12.6%)で、2000年12月最終週以来の水準へと、さらに切り下がった。

 次に、物価指標では、米10月の消費者物価指数(CPI)が総合で前月比▲1.0%という過去最大の下落率を記録したが、これは予想の範囲内。原油バブル崩壊後の価格急反落を受けて、生産者物価指数(総合)や輸入物価指数がすでに、前月比で過去最大の下落率を記録していた。市場にとってサプライズになったのは、コアが前月比▲0.1%となり、1982年12月以来のマイナスを記録したことである(3カ月前比年率では+1.1%)。

 ただし、このコア前月比▲0.1%で、「米国経済が持続的な物価下落、すなわちデフレの過程に入った」と即断してはならない。コアの前月比下落については、販売不振の新車価格が前月比▲0.5%、アパレルが同▲1.0%といずれも続落したことなど、財に原因がある。食品・エネルギーを除く財(財コア)は前月比▲0.4%で、エネルギーを除くサービス(サービスコア)は前月比0.0%というバランスになっている。