政府は2010年度予算案を25日の閣議で決定。一時取り沙汰された細川護熙内閣以来の予算越年編成は回避された。一般会計の総額は92兆2992億円で、当初予算としては過去最大となる。

 今回の予算案で、公共事業関係費は5兆7731億円(2009年度当初比▲18.3%)で、1978年度以来32年ぶりの低水準になった。一方、社会保障関係費は、子ども手当を新たに計上したこともあって27兆2686億円(同+9.8%)に膨らんだ。鳩山由紀夫首相が唱える「コンクリートから人へ」を象徴する歳出内訳の変化である。

 しかし、世界的な景気悪化と構造的なデフレ状況から税収の大幅な下振れが明らかになるという厳しい現実に直面した鳩山内閣は、既存経費の切り詰めを徹底することができず、(1)マニフェストに掲げた政策の修正や事実上の撤回(歳出と歳入の両面)、(2)「埋蔵金」など税外収入の積み上げ、という2つの手段に頼らざるを得なかった。(2)については、外国為替資金特別会計について2010年度に見込まれる剰余金の一部である3500億円を特例として繰り入れるという措置も取られた。

 ガソリン暫定税率を実質的に維持する代わりに、首相指示に基づき追加的に計上されることになった景気対策分(真水1兆円)は、「経済危機対応・地域活性化予備費」という形で、予算案に含まれることになった。

 市場が注目してきた2010年度の国債(新規財源債)発行額は、44兆3030億円。予算編成方針で掲げた「約44兆円以内」という枠は守られたものの、麻生太郎前内閣の下で編成された2009年度第1次補正予算における44兆1130億円を、わずかながら上回る数字になった。「約」という1文字に救われた形である。カレンダーベースの国債市中発行額は144兆3000億円で、年限別内訳も含め、市場予想に沿ったものになったため、債券相場への当面の影響はきわめて限定的なものにとどまると見込まれる。ただし、「埋蔵金」がいよいよ枯渇するとともに、マニフェスト予算の計上必要額が膨らんでくる2011年度の予算編成を含め、財政規律の面での「火種」が膨らみつつあるという点は、12月15日作成「国債発行上限『約44兆円』明記」などで、すでに指摘した。

 政府が閣議了解した2010年度の政府経済見通しで、名目GDPは前年度比+0.4%程度とされた。2009年度の実績見込みが同▲4.3%。2008年度の名目GDPは494兆1987億円と発表されており、2010年度の名目GDPは、政府の見通しで475.2兆円程度となっている。2010年度の国債(新規財源債)発行額は44兆3030億円で、国債発行額(財政赤字)のGDP比は9.3%という計算になる。