15日に閣議決定する「2010年度予算編成の基本方針」に、国債(新規財源債)の発行額に関する「約44兆円以内に抑えるものとする」という記述を盛り込む方針を政府が固めたと、14日に報じられた。
「44兆円」という数字を明記しないと財政規律が緩んでしまい、歳出増加に歯止めがかからなくなってしまうという市場サイドの声や、財務省の危機感が伝わった結果であろう。しかし、ただ「44兆円」とするのではなく「約44兆円」という記述にしたことは、国債発行額が「数千億円規模で上回っても、基本方針を守ったと主張することは可能」で、「44兆円を超えることを事実上容認した」ということである(12月15日 東京新聞)。野田佳彦財務副大臣は記者団に、「首相の意向もあった。結構固い表現だ」「上限か目標かなんて気にしてない。(約44兆円を)超えないんだから」と力説したという(同)。
うっかりしていると見落としてしまいそうな「約」の1文字で、政治的妥協が図られることになった。
債券市場からすれば、財政規律が守られていることを示す最低限のラインと見なされてきた「国債発行44兆円枠」が、予算編成方針でしっかり守られることになったとは言い難い。数千億円規模のバッファー部分が許容されたわけであり、2009年度第2次補正予算の編成で、赤字国債ではなく建設国債だという無理のあるロジックを前面に出しつつ、国債増発1000億円が許容されることになったのと同じパターンである。「蟻の一穴」という言葉が想起される。
予算編成の終盤にきて歳出増加圧力をかわし切れないのは鳩山政権が連立であるがゆえの弱みだという受け止め方が一般的だが、「政府が先週まとめた財政支出額7兆2000億円の緊急経済対策について、民主党の国会議員の間でも、『規模が小さすぎる』といった批判がくすぶっている」とする報道も出ている(12月15日 日刊工業新聞)。「内閣府が14日に開催した政策会議で、複数の民主党議員から『需給ギャップを埋めるために、積極的な財政出動が必要だ』などの意見が出た」「『カネを出さずに知恵を出す』という対策の基本理念は、国民新党や社民党だけでなく、民主党内にも十分に浸透していなかったようだ」という(同)。筆者は、ある新聞の政治部記者が「民主党というのはおカネを使いたい人たちの集まりだ」と述べていたことを思い出してしまった。