待ち合わせていたコルマールの駅で挨拶を交わしてすぐ、ニコラは言った。「東京にもマルシェ・ド・ノエルができたらしいねぇ。今朝の新聞に載っていたよ」
東京でも大人気となったマルシェ・ド・ノエル
マルシェ・ド・ノエル。つまりクリスマスマーケットは、フランスの、それもこのアルザス地方の冬の風物詩。それが東京にも飛び火して、しかも大盛況であることが、マルシェの本場で大きく報じられたというわけだ。
さて、このニコラとのランデブーの目的はといえば、まさにアルザス地方のマルシェ・ド・ノエル巡りである。
8月18日の記事で紹介したセレスタという町に暮らす友人夫妻のはからいに甘えて、今度は冬のアルザス、しかも本場のクリスマスシーズンを見てみようとやって来ていた。
案内役を引き受けてくれたニコラは、夫妻の友人で、アルザス生まれのアルザス育ち。仕事場もアルザスで見つけたほど、故郷を愛している。そのうえ、合気道が趣味の大の日本好きでもある。
ところで、そもそもマルシェ・ド・ノエルとは、一説によると、中世の昔、ノエル、つまりクリスマスのためのごちそうなどを売る目的で市が立ったことに始まるというもので、アルザス地方の中心都市、ストラスブールでの発祥は1570年と言われている。
クリスマスの時だけで世界中から200万人の観光客が殺到
これをもって、フランスで最も由緒のあるマルシェ・ド・ノエルとされるわけだが、現在、この時期に世界中から訪れる観光客の数は200万人にものぼるという。
ちなみに私自身も、パリ―ストラスブールノンストップのTGVの乗り場で、日本からやって来た数十人規模のグループに出会った。
このストラスブールを筆頭に、アルザスでは、町や村ごとにマルシェが立つのだが、「ここは風情がある」「これは見ておいたほうがいい」という、いわゆるごひいきの場所が地元の人々にはあるらしい。
しかも、「あそこはきれいだけれど、車を遠くに置いてから歩かなくちゃならないからなぁ」など、アクセス情報にもまた詳しい。そんなわけだから、ガイドブックや聞きかじりの情報は脇に置いておいて、今回は、生粋のアルザス人であるニコラのガイドにすべて委ねることにした。
12月半ばの土曜の午後ともなれば、ノエルの気分も高まってくる時期。村々のマルシェもほぼ出揃い、人出もまた多くなる。コルマール駅を車で出発して、私たちが最初に向かったのは、ドイツ国境に限りなく近い、ヌフ・ブリザック村。