日銀は12月18日、金融政策決定会合終了後の対外公表文で、中央銀行としてデフレを許容しているのではないかという内外の疑念を晴らすべく、「中長期的な物価安定の理解」の見直しを急きょ行った(従来は4月展望レポート作成時に議論を行ってきた)。

 公表文の6番目の段落には、次のような文章がある。

 「本日の金融政策決定会合では、上記認識のもとで、『中長期的な物価安定の理解』(以下、『理解』)について検討を行った。その結果、委員会としてゼロ%以下のマイナスの値は許容していないこと、及び、委員の大勢は1%程度を中心と考えていることを、より明確に表現することにより、物価の安定に関する日本銀行の考え方の一層の浸透を図ることが適当であるとの結論に至った」

 見直しがかけられた後の「中長期的な物価安定の理解」は、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」となった。

 従来は「0~2%程度の範囲内」という表現が使われ続けてきた。この表現だと、ゼロインフレのみならず、「程度」という言葉の解釈として、小幅のマイナスの数字(若干のデフレ)も日銀は許容しているのではないかと受け取られがちである。

 11月20日に政府がデフレ宣言を行うなど、国民一般および内外金融市場で、日本のデフレ状況と政策対応が注目を集めるようになっている。このような状況下、日銀としては、自らがデフレを容認しているのではなく、デフレファイターでもあるということを、あえてアピールしておく必要を感じたのだろう。

図表1: 日銀政策委員がみる「中長期的な物価安定の理解」の数値分布の変化
  07年4月27日会合 08年4月30日会合 09年4月30日会合 09年12月18日会合
総括表現 「消費者物価指数の前年比で0~2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散している」 「消費者物価指数の前年比で0~2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、1%程度となっている」 (同左) 「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」
数値分布 多くの委員「概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲」(このうち何人かの委員は「中心値は1%より若干低い水準を考えている」と付言)
一人の委員「1%から2%程度の範囲が適当」
別の一人の委員「0%台後半」
さらに別の一人の委員「1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えている」
複数の委員「1%を中心値として上下1%の範囲内」
何人かの委員「1%程度を中心値として上下0.5%の範囲内」
ある委員「0.5%~1%」
一人の委員「1%よりもゼロ%に近いプラスを中心に考えている」
多くの委員「1%を中心値として上下0.5%ないし1%の範囲内」
ある委員「0.8%を中心に上下0.5%の範囲内」
別の委員「0.5%~1%」
一人の委員「1%よりゼロ%に近いプラスを中心に考えている」
n.a.
政策委員 福井、武藤、岩田、須田、水野、西村、野田、中村、亀崎 白川、西村、須田、水野、野田、中村、亀崎 白川、山口、西村、須田、水野、野田、中村、亀崎 白川、山口、西村、須田、野田、中村、亀崎

出所: 日銀資料よりみずほ証券作成