クリスマス・年末を控えて商いが薄くなり、値振れが大きくなりやすい中ではあるが、ユーロが対ドルで大幅に下落している。15日の米国市場では一時1ユーロ=1.4503ドルまで値を下げた。主因は、ユーロ圏の内外で次々と浮上している信用不安問題である。
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国の政府系企業に関する信用不安問題は、12月14日にアブダビ首長国が金融支援に乗り出したことで、ひとまず沈静化した。このため、ドバイ向け債権が欧州の銀行に多いことを材料に売られていたユーロは、いったん下げ止まった。しかし、ユーロの反発力は弱く、15日には、オーストリアの銀行に関する信用不安問題が市場の注目を集めたことに加え、発表された独12月のZEW景気期待指数が50.4(前月比▲0.7ポイント)となり3カ月連続で低下したことが嫌気されて、ユーロは再度売られた。
ユーロの売り材料に最近なっている、ドバイ関連以外の信用不安問題について簡単にまとめてみると、以下のようになる。
◆ウクライナ問題。12月11日の欧州外為市場で、ユーロが一時1ユーロ=1.4586ドルまで下落した理由は、ウクライナの副首相が国際通貨基金(IMF)に対して20億ドルの緊急融資を求めたとの報道だった。IMFはウクライナに対する金融支援をすでに決定しているが、実際の資金供与については同国の改革実行度合いを見極めながら行っていく姿勢を取っている。
◆ギリシャ問題。財政赤字が膨張し、市場で国債利回りが大幅に上昇しているギリシャでは、パパンドレウ首相が12月14日の演説で、社会保障費用の10%削減やキャピタルゲイン課税を含む財政再建策と、銀行幹部ボーナスへの90%課税を発表した。しかし、政治的に困難とされる公務員給与削減には踏み込まなかったため、ギリシャ国債のドイツ国債と比較した上乗せスプレッドはさらに拡大した。ギリシャのパパコンスタンティヌ財務相は15日、ギリシャは他の欧州連合(EU)加盟国による救済について協議していない、と述べている。