「ペネロプ」という刺繍のメゾンが開く展覧会への招待状が届いていた。刺繍で有名なところはパリにもいくつかあるが、ここはほかとはちょっと位置づけが違っている。
困窮する人のためだった仕事が半世紀で権威に
1950年に設立されたアソシエーション、つまり協同組合的なもので、その発足の目的は、困窮に瀕している人に仕事を分け与えるというもの。
つまり、家でもできる刺繍の仕事をしてもらうことによって、多くの人の生活を助けるという思想の下に生まれた。
それから半世紀以上経つ間に、その技術はより確かなものとなり、大統領府や大使館などからの注文を受けるほどであるという。
そして、毎年恒例になっているのがこの展覧会。刺繍のテーブルクロスやナプキンなど、メゾンの作品のみを展示するのではなく、様々なテーマから発想されるテーブルのトータルコーディネートを披露するというもので、カトラリーや食器などは名だたるパリの有名店が協力している。
テーブルアート、つまり食卓を飾るという発想は、日本人にももちろんあるけれども、ナイフ・フォークの国であるこちらでは、やはりその歴史も長く、裾野もまた広い。誰かをもてなすのに、自宅よりも外食の方を選ぶことが少なくない日本人に対して、フランスでは、自宅でのランチやディナー、パーティーが多い。
フランスの日常生活から生まれたテーブルアート
そして、人によって、あるいは家庭によって力の入れ具合はもちろん違うけれども、みなそれぞれに、テーブル回りに趣向を凝らす。
だから、こういったテーブルアートの展覧会というのは、少なからぬ人が実用に生かす意味も含めて注目するものなのである。
クロスやナプキン、食器の取り合わせ、ちょっとしたアクセサリー、あるいは花あしらいなど、テーブルアートにまつわるアイテムそのものが、フランスの日常のアートの一部と言っても、決して言い過ぎではないのではないかと思う。
さて、「ペネロプ」の展覧会は、会場を毎年替えて開かれているが、今年は「レジオンドヌール博物館」が舞台になった。「レジオンドヌール」とは、フランスの勲章のこと。
その起源は、ナポレオンの時代にまでさかのぼる。