空からの眺めは最高だった。幼い頃頭の中でイメージしていた、神秘性がそこにはあった。映画「ブラッド・ダイヤモンド」の主演レオナルド・ディカプリオが、はげた山々の中で最期を迎える光景が、ふと思い浮かんだ。
北京大学生よりも流暢な英語を話すガイド
「自分は今、望んでいた最高の場所にいる」。そんな心境に、自分もなった。若干緊張しつつも、すがすがしい面持ちで、チベット・ラサ空港に到着した。
空港を出ると、現地の関係者が出迎えに来ていた。ガイドを担ってくれたのは27歳のチベット族(以下「M氏」)。コミュニケーションがきちんと取れるか心配だったが、英語も中国語も抜群に上手い。
チベット族は小学1年生からチベット語、中国語、英語を勉強するのが通例で、トリリンガルになる人間も少なくない。
北京大学などのエリートなんかよりもよっぽど上手に英語を操る。こっちは生活がかかっている。単に留学のためだけに英語試験を受ける大学生とは、置かれた環境が異なる。
ラサの標高は3650メートル。初日はまずこの富士山頂に匹敵するほどの高さを誇る高原地に慣れなければならない。意識的にゆっくり歩きながら、昼食を取って、ホテルに帰ってきた。
激しい高山病に襲われ死も予感
それからパタリ。ひどい高山病に見舞われた。長い夜が始まった。寝ついてもすぐに起きてしまう。このまま逝ってしまうんじゃないかというくらい、つらい夜だった。次の日もダメかなという心境、不安が募る。
目覚めると、調子が悪いことに気づいた。それでも必死に己の心身を説得し、ラサの聖なる象徴「ポタラ宮」に登った。空が近く、青く感じた。建物の中ではチベット仏教を信仰する人たちが、独特のスタイルでお祈りを捧げている。
チベット特有のバターで作った蝋燭が印象深かった。皆次々にお金を落としていく。どこからそんな金が降ってくるのかと、疑問に思った。ラサ市内にいるチベット族・僧侶に普通の収入があるとは思えない。どうやって生活しているのだろうか。