自分の娘が「望まない妊娠」をする。娘を持つ親にとってこれほどの苦しみはない。

 そう考えて、私は『金色のゆりかご』を構想した。

 『金色のゆりかご』では、娘・まりあの妊娠を知った母・須藤ゆかりが、娘の妊娠・出産をなかったことにしようと様々な画策をする。

 夫と離婚した後に、1人で娘を育ててきたゆかりにとって、まりあの「望まない妊娠」は自分の行いの全てを否定するものに他ならなかった。

 娘のお腹に宿った新しい命を大切に思うよりも、「望まない妊娠・出産」が娘にもたらす数々の不利益を考えて、ゆかりは赤ちゃんを海外養子に出すことを決意する。

 しかしながら、「望まない妊娠・出産」を取り返しようのない失態とは見なさずに、アクシデントの一種として乗り越えていく人たちが多くいることも、きちんと認識しておかなくてはならないだろう。

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 この頃のバラエティー番組には、実に様々な人生経験を持つ人たちが登場する。牧師に転身した元暴力団員、教員になった元暴走族のリーダーといった人たちが、「事実は小説よりも奇なり」を地でゆく人生を告白してみせる。

 そんな中に、10代で妊娠・出産をした女性ばかりを集めた番組があった。

 (どこまで本当なのかと疑いだせばきりがないが、ここでは番組の内容をそのまま信じておくことにする)

 女性8人のうち、一番早い人は14歳で妊娠し、15歳で出産。現在21歳で、子供は3人に増えている。4つ年上の夫は建設現場で働き、家族5人で楽しく暮らしている。

 他にも、16歳で出産した後、キャバクラで働きながら家計を支えている女性や、稼ぎは夫に任せて主婦として家事と育児に専念している女性と、それぞれ条件は違えど、不意の妊娠をきっかけに結婚し、夫婦が協力し合って家庭を築こうとしている姿勢は共通していた。

 そうした逞しさには素直に共感を覚えるし、これから先も家族が仲良く暮らしてゆくことを願わずにはいられない。