職業柄、外交関係の雑誌にはできるだけ目を通すようにしている。特に気に入っているのはCFR(米外交問題評議会)が発行する「フォーリン・アフェアーズ」誌だ。最新号の特集は「ポスト9/11」だったが、たまたま中国に関し対照的な2本のエッセイを見つけたので、今回はこれをご紹介したい。

対照的な2つのエッセイ

 フォーリン・アフェアーズといえば、以前は「中央公論」や「論座」で主要論文の日本語訳が読めたものだが、今やそんな贅沢はなくなった。同誌「日本版」も発行されているが、今回ご紹介する中国関係エッセイはいまだ翻訳されていない。仕方がないので、概要のみ簡単にご紹介しよう。

 第1のエッセイは「中国のスーパーパワー化は不可避(The Inevitable Superpower)」と題され、中国経済がGDP、貿易量などの面でいずれ米国経済を追い抜き、中国が世界最大の債権国となることは間違いなく、さらにその時期も専門家が考えるよりはるかに早いと論ずるものだ。

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いずれは元が世界の基軸通貨に?今年9月、ロンドンにオフショア市場を開設することで英中が合意した〔AFPBB News

 要するに、中国経済は米国に対し圧倒的優位に立ち、中国の超大国化は時間の問題、という楽観論である。

 1956年スエズ動乱の際、米国が英国債購入停止をちらつかせて英軍にスエズ撤退を強いたように、いずれ中国は経済力を背景に米国に政治的圧力をかけてくるという中国脅威論でもある。

 これに対し、「中国は中級王国(The Middling Kingdom)」と題された第2のエッセイは、中国の経済成長は懸念されるほど危険ではない、中国経済は近い将来頭打ちとなり、ブラジル、メキシコ、ロシアなどの中所得国家と同様の成長率に収斂していくだろうと論じている。

 第1のエッセイとは論旨が全く逆で、中国経済はインフレ、バブル、人口ボーナスの終焉など様々な構造問題を抱えており、もはや高度成長を続けることはできないというのだ。

 中国経済の見通しはかなり悲観的であり、中国が米国にとって脅威とはなり得ないことを暗に示唆しているようにも思える。