鳩山内閣の支持率下落に歯止めを掛けたのは、間違いなく政府の行政刷新会議の「事業仕分け」である。2009年11月11~27日(前半と後半で計9日間)、2010年度予算概算要求の無駄を洗い出そうという初の試みは、論議の全てが公開された。ワイドショーを含むメディアの連日の大報道で、国民の間に高い関心を呼んだ。

 その手法はいろいろ批判も浴びたが、国民環視の中で無駄削減に取り組んだことは画期的であり、評価したい。もちろん、「政治ショー」としては大成功と言えよう。一体、なぜこの仕分けに国民は拍手喝采したのか。(敬称略)

 「皆、勝手に言いたいこと言ってる。こらおもろいわな。なんで自民党(政権)の時にせなんだか」

 自民党参院幹事長の谷川秀善が11月17日の記者会見で悔しそうに語ったこの言葉が今でも耳に残る。

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河野太郎自民党衆院議員「うらやましい・・・」(参考写真)〔AFPBB News

 いくら自民党幹事長の大島理森が「パフォーマンスにすぎない」と仕分け批判を展開しても、谷川のように本音を漏らす議員が自民党内に何人かいたのは事実。27日に仕分け現場を視察した自民党衆院議員の河野太郎も「正直言ってうらやましい」と語っていた。確かに、国民の目から見てこれほど「おもろい」政治的パフォーマンスはなかった。

 「自民党もこんな風に政治主導の姿を国民に見せれば、もっと人気は出たんだけどな。でも、うちには族議員がいるから予算削減なんて無理だ」――。ある自民党中堅議員は冷静に自らの所属政党を分析した。

 そう、政権交代があったからこそ、このように予算編成のプロセスが国民の目の前に曝されたのである。自民党は今さら悔やんでも仕方ない。仕分けは政権交代の一つの大きな成果――。国民の目にはそう映っている。

「仕分け」効果で支持率反転も

 11月24日付の産経新聞によると、鳩山内閣の支持率は62.5%(前回調査比1.5ポイント増)。発足後に下げていたが、反転する結果となった。仕分けに関しては「行政の無駄の洗い出しに役立つ」と回答した人が88.7%に達し、まさにこれが支持率を押し上げた。

 同日付の毎日新聞の支持率は64%。前回調査から8ポイント低下したが、仕分けに対しては「評価する」が74%に上った。もし仕分けがなければ、支持率はもっと下がっていただろう。また、30日付の日経新聞でも内閣支持率は68%(前回調査比5ポイント減)だが、仕分けを「評価する」が75%を記録している。