前々回は小奇麗になった北京のお話をしたが、今回は謎の多い「共産党幹部人事」について考えてみたい。経済分野では最近情報公開が進みつつある中国だが、政治分野、特に党人事の話ともなると、普段は饒舌な中国人ですら急に口が重たくなる。
国家機密だらけの北京
先々週北京では某ホテルに2泊する予定だったのだが、なぜか2日目は部屋が取れなかった。ふと見渡すと、ロビーは米国人男女でごった返し、屈強な男たちが偉そうに何やらホテル関係者に指示を与えている。
待てよ、奴らはホワイトハウスの連中だ、なるほど、そうだったのか!
「11月16日夜からオバマ大統領が泊まるのでしょう?」
部屋まで荷物を運んでくれた中国人のボーイにそれとなく聞いてみた。
「えっ、それは秘密情報のはずです。でも、どうして知っているのですか?」
ボーイは驚いて答えた。「そんなこと、新聞に書いてあるよ」と笑って別れたが、よく考えてみれば、新聞も宿泊ホテル名までは報じない。しかし、中国ではこんな明白なことすら国家機密に分類されるのかと思うと、ホテルのボーイが哀れに思えた。
政治雀たちが好む「権力闘争説」
どの首都にも政治情報と噂話を職業としている人々はいる。しかし、北京ほどその種の情報入手が難しい都市は少ないだろう。オバマの宿泊先すらこの有様だから、政府人事情報や党内議論の内幕など最高レベルの国家機密とされているに違いない。
この10年ほど、共産党内部人事に関する報道を読むたびに、疑問に思うことがある。
中国国内で不自然な人事やキャンペーンが起こるごとに、北京の政治雀たちの「胡錦濤対江沢民の権力闘争が苛烈に」といった観測が報じられてきたからだ。
今回北京でも、重慶での薄熙来党書記による「打黒」(マフィア取り締まり)キャンペーンが話題になっていた。