米オバマ大統領の初となるアジア歴訪が終了した。前回のヒラリー・クリントン国務長官同様、ホワイトハウスが最初の目的地として選んだのは日本だった。米国の同盟国である。APEC(アジア太平洋経済協力)会議が開かれたシンガポールを挟んで、中国が3番目、最後が韓国であった。

オバマ訪中に沸く中国メディア

米中首脳会談、オバマ大統領「前向きで包括的な関係を」

北京の人民大会堂で開かれた歓迎式典で、中国の儀礼兵の前を歩くバラク・オバマ米大統領と胡錦濤・中国国家主席〔AFPBB News

 中国メディアは「奥巴馬亜洲行」(オバマアジア紀行)をこぞって取り上げた。大統領が上海に到着する直前、政府系の英字新聞「CHINA DAILY」は『U.S-China relations: Welcome Obama』という特集を組み、数ページにわたり米中関係の歴史を振り返り、未来に期待を寄せた。

 今や3億を超えるネットユーザーの現状認識に深い影響を与える各ポータルサイトも特集ページを組んで、日程、訪問目的、背景、会議の成果など、詳細に報道していた。筆者自身、中国人の米国及び米中関係への関心の強さを再認識した次第である。

 大統領が北京を去った18日、同じく政府系の《環球網》が行ったネット世論調査によると、70%が「オバマ訪中は米中関係を強固にした」と考えており、「不満」を露わにしたのはわずか4.6%であった。

 日本では、大統領の訪日が1日遅れたことを良く思わない声が少なくなかったかもしれないが、同時に、最初に日本へ来たこと、アジア政策演説を日本で行ったこと、などの事実に胸を撫で下ろした関係者も、少なくなかっただろう。

 アジア政策演説では、米国の対中政策が中心テーマの1つであった。訪中の直前である。中国メディアも一語一句に注目していた。演説後のウェブサイト、翌日の紙面のトップを飾ったタイトルは想像に難くない。「The United States does not seek to contain China(米国は中国を封じ込めるつもりはない)」の部分である。

 中国国民は「待ってました!」とばかり、歓声に沸いた。マスコミは「米国がアジアに帰ってきた」というトーンで報道した。大統領が「米国は太平洋国家であり、自分は米国大統領史上初めての太平洋大統領である」と表明したことも大きく関係している。

米国債を押さえている限り米国は何も言えない

オバマ米大統領、温首相と会談 訪中日程終了へ

万里の長城を歩くオバマ大統領〔AFPBB News

 オバマ大統領の「アジア重視」を当局も歓迎した。米中首脳会談では、人民元切り上げ、人権など、政治体制やイデオロギーに関わるテーマにはほとんど触れられなかった。大統領と中国人権活動家との面会もなかった。

 中国のリーダーとダライ・ラマとの対話を軽く促した程度だった。逆に、中国当局は大統領に故宮や万里の長城を見学してもらい、中国の歴史や伝統を鑑賞させた。

 その結果、オバマ氏は本国の保守派やマスコミの批判を浴びることとなった。筆者は中国共産党の幹部数人とオバマ訪中をレビューしてみたが、彼らは口を揃えて指摘した。「これがカネの力だ。国債を押さえている限り、米国は何も言えない」