資金洗浄(マネーロンダリング)・テロ資金供与対策をめぐり、G20首脳会議宣言では各国のスクラムが注目を浴びた。しかし、日本政府の対策は中国よりも低い国際評価を受けているのが実情だ。なぜそんな事態になってしまったのか・・・。
2009年9月、米国ピッツバーグで開催されたG20首脳会合。その共同声明は「われわれはタックスヘイブン、資金洗浄、汚職、テロ資金供与及び金融健全性基準への対応に関するモメンタムの維持にコミットしている」と高らかにうたい上げた。
「20周年」を飾るにふさわしい声明。国際犯罪組織による資金洗浄を摘発しながら、テロ資金供与を阻止しようと日夜地道な捜査を続ける司法・金融当局者にとって、晴れがましい瞬間となった。
G20首脳は「資金洗浄との戦い」に不退転の決意を表明した。資金洗浄及びテロ資金供与と戦う国際枠組みである金融活動作業部会(FATF)の活動に対し、世界GDPの8割を占める国々が惜しみない賞賛を送る「儀式」が執り行われたのだ。
その高みに至るまで、20年の歳月が流れていた。
1989年、フランス・パリ郊外で開かれたG7アルシュ・サミット。資金洗浄から金融機関と金融取引を守るため、各国はFATFの創設で合意した。
FATFのメンバーは、33の国・地域並びに欧州委員会(EC)、湾岸協力会議(GCC)、そして5つの地域的協力組織から構成される当局の代表。とはいえ、資金洗浄とテロ資金対策に強制的権限を持つわけではない。
FATFの事務局はパリにある経済協力開発機構(OECD)のオフィスに間借り中。OECDが加盟国の経済政策や資本移動自由化条約の遵守について各国当局を動機付けてきた手法が自然とFATFのものになった。
それこそが、メンバーがお互いに義務の遵守状況をチェックし合う「ピアレビュー」、すなわち友人同士による相互評価を指す。友人からの直言だけに耳に痛い、というわけだ。
FATF自身も努力を重ねてきた。1990年、資金洗浄防止のための各国の努力項目を定めた「FATF40の勧告」を採択。2001年9月の米同時多発テロを受け、テロ資金供与摘発を重要施策に採用した。当初8項目の特別勧告は2004年に1項目追加され、「FATFテロ資金対策に関する9つの特別勧告」として定着している。
40の勧告と9つの特別勧告に関するFATFメンバーの相互審査は、既に3巡目を迎えている。透明性向上を目指し、FATFは相互評価報告書を3巡目から全て公表。これで各国・地域の遵守状況とその評価がグローバルな尺度で白日の下にさらされることになった。
専門家に衝撃、中国に劣るFATFの対日審査評価
3巡目の相互評価の中で各国の専門家に衝撃を与えたのが、2008年10月公表の対日審査結果だった。