電力不足と超円高が日本の産業界を襲っている。日本企業は国内の生産拠点の一部を海外に移転することを検討しているようだ。

 震災直後に寸断されたサプライチェーンは、ほぼ復旧された。問題は政府のエネルギー政策が明らかにされず、電力不足が長期化する恐れがあるということだ。

 また、円高も深刻だ。財務省・日銀の為替介入にもかかわらず、1ドル76円台の超円高水準にほぼ固定されている。このままでは、工場を日本国内にとどめると国際競争力が大きく低下すると懸念されている。

 振り返れば、1990年代半ば、円高が急速に進んだのを受けて、日本のタオルやメガネフレームといった低付加価値の製造業が相次いで海外に移転した。これは第1次産業空洞化だった。

 それに対して、今回は第2次産業空洞化と言える。第1次産業空洞化と違い、第2次産業空洞化はキーコンポーネント(核心技術、中核部品)の製造を海外に移出することになる。

円高と不安定な電力供給、日本企業を取り巻く内憂外患の情勢

 円高の弊害は、日本企業のドル建てコストが大きく押し上げられていることにある。特に人件費とキーコンポーネントの製造コストが高騰することによって日本企業の価格競争力が急低下している。

 本来ならば、資源の調達が海外からの輸入に依存している日本は、円高時に資源を大量に調達することによって経営コストを押し下げることができるはずだ。だが、いまだにエネルギーなどの資源トータルプランが構築されていない。

 その結果、財務省・日銀は為替介入を実行するが、そこで得られたドルの多くを米国債保有に振り向けている。そのドルはまた再び日本に戻り、円相場を押し上げる圧力の源泉になっている。

 企業にとって、為替の変動リスクを為替予約によってヘッジすることができるが、企業のレベルでは、長期化する円高傾向を回避することができない。円が高くなればなるほど海外に押し出されることになる。

 これまで、半導体や電気・電子業界の日本企業は、周辺部品の製造を海外に移転したり、海外で調達するようになったりしても、キーコンポーネントの開発と製造は日本国内に残してきた。しかし、76円台の円高では、キーコンポーネントの製造をすべて日本国内に残すことは困難である。