マット安川 中国ウォッチャー・宮崎正弘さんが今回のゲスト。日本からは見えにくい中国の内政や外交の本質についてうかがい、初めて聞く話もたくさんありました。

今、世界中で中国バッシングが巻き起こっている

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『中国が日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店)『自壊する中国 ネット革命の連鎖』(文芸社)『震災大不況で日本に何が起こるのか』(徳間書店)『オレ様国家 中国の常識』(新潮社)など。
(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 尖閣諸島をめぐる動きなどから、中国は日本ばかりをいじめていると思われがちですが、それは違います。今、一番いじめられているのはベトナム、次いでフィリピンです。何しろ彼らは、自国の領土を中国の軍艦に占拠されているんですから。

 アジアだけじゃありません。中国の狼藉は中南米にもアフリカにも中東にも及んでいる。石油などの資源を採掘するかと思えば、そこで働いているのは中国人ばかりで、現地にはさっぱり利益が還元されなかったりします。

 結果、今、世界中で中国バッシングが起きています。これは中国の戦略的なミスと言うべきでしょう。あまりにも急激なアクションで諸外国に警戒心を与えてしまった。

 ヒトラーがどんどん軍備を拡張して、片っ端から他国の領土に手を出したのに似ています。あのころ大国がドイツへの警戒を強めたように、今はアメリカが完全にいきり立っている。昔、派手に戦争をやったはずのベトナムと手を組んで軍事演習をするくらいです。

 こういう状況の変化を捉えて、もう少し大きな枠組みから日中関係を見直した方がいいと思います。

中国で今、静かに進行している地殻変動とは?

 私が注目しているのは、そんな中、中国国内で地殻変動の予兆がいくつも見て取れることです。特に例の高速鉄道事故が起きて以来、今までなら考えられなかったようなことが次々と起きています。

 まず、公的なメディアがいっせいに、中国共産党中央宣伝部の指示に背くということがありました。反旗を翻したわけじゃないにしても、指示とは違う報道をしたんです。

 天安門事件以降、こんなことはほとんどありませんでした。地方の小さな新聞が中央の指示に逆らう報道をしたことはあったにしても、その場合、編集長が解雇されたものです。しかし、今回はそれもありません。