日本人にとって最もなじみの深い海外の空港の1つが韓国の仁川(インチョン)国際空港だろう。
北東アジアのハブ空港として定着するとともに毎年巨額の利益を上げている仁川国際空港を民営化し、株式を一般国民に売却しようという構想が韓国与党内で浮上している。2012年の総選挙と大統領選挙をにらんだ「庶民経済対策」の一環だが、「アジアの勝ち組ハブ」の地位は守れるのか。
「仁川国際空港を民営化して、株式を国民株方式で売却すべきだ」
こうぶち上げたのは、李明博(イ・ミョンバク)政権を支える与党・ハンナラ党の代表に就任したばかりの洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員(56)だ。
超優良企業の株式を一般国民の手に
仁川国際空港を運営するのは「仁川国際空港公社」という公企業だ。株式会社形態になっており、全株を政府が保有している。
李明博政権は、以前から仁川国際空港公社の民営化を計画している。
その内容は、(1)政府が51%以上の株式を保有、(2)滑走路・管制塔などは国家が所有、(3)外国人による出資は30%以下に制限、(4)個別航空会社による出資比率は5%以下に――などとなっている。
洪代表は、この民営化計画に「15%を国民株方式で売却する」ことを盛り込むことを主張したのだ。
「国民株」とは何か。洪代表は、具体案を示していないが、公募する場合15%分を一般国民向けとしようという考えだ。
一部には、「所得などで売却対象者を限定する」「一定期間以上保有することを条件に売却額を安く設定する」といった措置を考えているとの見方もあるが、真意は不明だ。
とにかく企業ではなく、一般国民に株主になってもらおうということだ。もちろん、その背景には、株を国民に買ってもらい、儲けてもらおうという狙いがあるはずだ。