ピッツバーグでの2日間にわたる討議を終えたG20サミットは、首脳声明を発表して、25日閉幕した。声明には、今後の各国による経済政策の動向を見ていく上で、重要なヒントが潜んでいる。
首脳声明は前文で、現在は「危機から回復への重要な移行期にある」と位置付けた上で、4月の前回会合で合意され実施された政策総動員について、「効果があった(It worked.)」と、誇らしげに記述した。
だが、「正常化してきたという感覚が慢心につながるべきではない(A sense of normalcy should not lead to complacency.)」と、その後の部分で、しっかりくぎを刺している。「回復と修復のプロセスは未完成なままである」「多くの国では失業が受け入れ難いほど高いままである」「民間需要の回復のための条件はまだ十分整っていない」といった文章が並んでいる。
したがって、G20の政策対応は、「持続的な回復が確実になるまで力強い政策対応を維持する(to sustain our strong policy response until a durablerecovery is secured)」というものになった。
ただしそれは、「出口」戦略検討とのバランスを考慮したものとなる。首脳声明には、「われわれは時期尚早の刺激策撤廃を回避する」「同時に、われわれは出口戦略を準備し、適切な時期が到来すれば、財政面の責任へのコミットメントを維持しつつ、協力および協調して異例の政策支援をとりやめる」と書き込まれた。
また、G20は、「力強く持続的でバランスの取れた成長のための枠組み(a framework for strong, sustainable, and balanced growth)」で合意した。
具体的には、責任ある財政政策運営、過剰な信用などを予防するための金融監督強化、経常収支の均衡化努力と保護主義排除、「経済ファンダメンタルズの基調を反映した市場指向の為替相場の文脈における物価安定と整合的な金融政策運営( undertake monetary policies consistent with price stability in the context of market oriented exchange rates that reflect underlying economic fundamentals)」、潜在成長率を高めるための構造改革などについて、G20はコミットした。
そして、よりバランスの取れた世界経済成長を実現するため、G20のうちで経常赤字国は、民間貯蓄を促し、財政を健全化していくとともに、開放的な市場を維持し、輸出を強めることを約束した。一方、G20のうちで経常黒字国は、国内需要を強めることなどを誓約することになった。各国による政策の実行状況については今年11月から相互監視が行われる見通しで、国際通貨基金(IMF)がこれを支援する。
1930年代の大恐慌や1990年代の日本の経験があることから、時期尚早の景気刺激とりやめは回避すべきだという点で、首脳の意見は完全に一致したようである。
景気刺激策継続のリミットである「持続的な回復が確実になる」時期、具体的には失業率が下がるなどして民間需要の回復が見込めるようになる時期については、個別国による判断が先行するのではなく、世界経済を話し合う定期協議の場として、G8サミットに今後取って代わることになったG20サミットで、首脳レベルで協議した上で、その条件達成の有無が確認されることになると考えられる(今後のG20サミット開催スケジュールは、10年の6月にカナダ、11月に韓国、11年にフランス)。
そしてその後に、「出口」戦略が協調的な政策行動として行われていく、という流れが想定される。
これは重要なポイントである。むろん、G20は政府サイドの話であるし、中央銀行トップは参加していないが、すでに述べたように、今回合意された「力強く持続的でバランスの取れた成長のための枠組み」には、金融政策についての記述がしっかり盛り込まれていたことに留意したい。