大ベストセラー『女性の品格』で、職場から家庭まで様々な場面における女性の振る舞い方を語った昭和女子大学学長の坂東眞理子氏。新刊『幸せの作法』では、働く女性の心構えや職場での振る舞い方に焦点を当てた。

 女性の社会進出が進んだが、実際の職場ではまだまだ男性中心の伝統的な価値観が生き残っているという。女性がその中で信頼される働き手となるためにはどうすればいいのか。女性が振る舞い方を学ぶことはもちろん大切だが、坂東氏は男性も変わることが求められているという。

──女性の社会進出が言われて久しいですが、今の女性が働く環境をどう見ていますか。

坂東 今でも戸惑っている男性が多いんじゃないですか。以前は会社の中の女性と言えば、男性のアシスタントをする人とか、事務処理専門や受付の人とかだったんですよね。でも今は、「やるぞ」と男性に負けないようなモチベーションで会社に入ってくる女性が増えました。

坂東眞理子(ばんどう・まりこ)
富山県生まれ。昭和女子大学学長。東京大学卒業後、1969年総理府入省。内閣広報参事官、埼玉県副知事、在豪州ブリスベン総領事、総理府男女共同参画室長、内閣府男女共同参画局長などを経て2003年に退官。2004年、昭和女子大学教授となり、昭和女子大学女性文化研究所長、昭和女子大学副学長を経て、2007年より現職。著書に『女性の品格』『親の品格』など多数。(写真:前田せいめい)

 はやりの言葉で言えば、いわば「肉食系」の女性が同僚や部下になって、「どう対処したらいいか分からない」と戸惑っている男性って多いんじゃないでしょうか。

 これは職場に限った話ではないですが、若い男性を見ていると、どうも女性に比べるとひ弱なようですから。子供の時からお母さんが上げ膳据え膳して、習い事させて、送り迎えもして、手厚く手厚く育ててますからね。そうやって育てられるから、どうしてもひ弱になる。

 職場では、特にある一定の年齢以上の男性が戸惑っているんじゃないかと思います。今までとはまったく違うタイプの女性と一緒に働くことになって、どう接したらいいか分からない。

 私は1969年に総理府に入りました。ちょうど今から40年前です。その頃の日本の職場は本当に伝統的な日本社会だったんです。おまけに役所ですから、それこそ絵に描いたように年功序列で肩書社会なんですよ。

 そういうところに初めて上級職採用の女性が入ってきたんです。上司はみんな、私をどう扱ったらいいのか分からなくて、すごく戸惑ってました。それから40年経ちましたが、日本の職場の状況が変わったかと言うと、あんまり変わっていないんではないかという気がします。

伝統的な職場が今も生き延びている

──その頃よりも、女性はずいぶんと働きやすくなったのではないかと思うのですが。

坂東 もちろん変わった部分は数多くあります。第1に、働く女性の数が飛躍的に増えました。男性に負けない知識や技術を身につけて、社会に出て活躍する人が増えています。

 第2に、制度、枠組みが変わりましたよね。雇用機会均等法ができて、性別による差別をしてはいけないことになった。セクハラからも守られるようになりました。また育児休業法のおかげで、子供が産まれてからも働き続ける人が増えました。

 第3に、男性が「女性を活用しなくちゃいけない」という意識を持つようになりました。これも大きな変化です。