オマハの賢人・投資家ウォーレン・バフェットは2008年9月、中国企業BYDの株式10%を手に入れた。代わりに払い込んだのは2億3000万ドル。
日本は完全に蚊帳の外に置かれた「BYD成長物語」
経済・企業の成長や浮沈のドラマが、ひと昔前の輸入物テレビ映画みたいに彼岸の話として以外感じられなくなりかけているなら、オイちょっと待ってくれ、だ。それは日本におけるドラマの不在を思わせる。日本経済の零落をしみじみ偲ばせ、寂しくさせるじゃあありませんか。
で、いまBYDの勃興を見ていると、それを思う。
日本はこの成長物語について、しょっぱなからカヤの外である。BYDについて触れること、英文メディアにあってますます盛んなのに、邦字のそれは少ないまま。朝日新聞に珍しく記事を見つけたと思いきや、朝日がBYDに入れた取材のアポを全部ドタキャンされたトホホ譚を綴った実録だったりする。読まされる方もナサケナイ。
頭文字はBuild Your Dreamsという意味だとか。日本ではいまもって名前になじみがない。しかし充電池メーカーとしては、高シェアとともに長らく世界にその地歩を固めていた。
次に電気自動車でパイオニアになろうとしつつあるというので、バフェットは資金をつぎ込んだ。そのことが同社の認知度、ブランド価値を上げ、株価上昇につながる好循環をもたらした。
電池メーカーが4輪に進出するとは、いかにも当世風の出世話であること、創業者Wang Chuanfu(王伝福)なる人物が、現代中国にはザラにいるのだろうが典型的立志伝中の人であること、加えて、売り出すという電気自動車のカタログ諸元がハッタリ的にすさまじいこと、の3つがあいまって、BYDはその知名度を急速に伸ばしつつある。
恐るべき性能を披露した最新型「e6」
Wang Chuanfu氏、ものの見事に日本のジャーナリズムを相手にしない。
いわゆるダボス会議の主催者世界経済フォーラム(WEF)が毎年中国各所で開くミニ・ダボス会議などにはきっちり出るようだから、パブリシティそれ自体を嫌っているのではなさそうだ。
攻め込む市場の本丸を米国と欧州に据え、日本は視野の外に置くBYDにとって、日本での知名度などまだ考慮に値しないと考えているに違いない。
内燃機関の自動車と電気自動車は、似ているとすれば外観だけであとは全くの別物、違う生き物と思うべきなのだろうが、クルマの範疇に入れられるとトヨタだホンダ、日産だという横綱大関に比べられる。面白くないから日本には行かないし、日本の記者とも会わないという、どうやらそれがWang Chuanfu流対日方針であるかに見える。