アメリカ大陸に欧州人として初めて到達したコロンブス、奴隷解放の父と呼ばれたアメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーン、ノーベル平和賞を受賞した第26代大統領セオドア・ルーズベルト。
英雄たちの偉業に疑問を突きつけた新・歴史書
アメリカ史を飾る偉人たちの名は、アメリカのみならず、日本でもよく知られている。今も昔も、子供に人気の伝記シリーズには、ほぼ必ず彼らの名前が入っているほどだ。
しかし、そんな英雄たちの偉業に、別の角度から光を当て、疑問を突きつけたのが、本書『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』だ。
本書は、国際政治学者ハワード・ジンが1980年に出版した『民衆のアメリカ史』を、2006年のジョージ・ブッシュ政権の2期目まで「内容をアップデート」し、若い世代を含めた幅広い読者に読めるよう、編集し直したものである。
『民衆のアメリカ史』は、出版当初から注目を集め、教科書に代わるテキストとして使う高校や大学が続出した。100万部突破を記念した朗読会には、カート・ヴォネガットやアリス・ウォーカーをはじめとした多数の作家やダニー・グローバーなど俳優らが参加した。
本書がこれほどまでに大きな反響を呼んだのは、著者ジンが、アメリカの歴史を有色人種、女性、労働者、貧困層といった弱者の立場から読み直したからだ。
コロンブスのアメリカ大陸到達は、先住民族(インディアン)の虐殺と、白人による領土拡大の始まりであり、それに伴う労働力の不足を補うためにアフリカから黒人を奴隷として連れてきたことが、その後アメリカ社会をゆがめ蝕み続ける人種差別問題の発端となった。