7月1日は中国共産党創建90周年に当たり、全国規模で大がかりな祝賀行事が展開された。それに合わせ、1日繰り上げた6月30日には北京~上海間の高速鉄道も開通し、花を添えた。

 しかし、間に合わなかったイベントもあった。中国が大連で修復してきた旧ソ連の空母「ワリヤーグ」の試験航海である。7月1日にワリヤーグが試験航海するという報道がネットを賑わしていたが、先延ばしされたようだ。

 考えてみれば、ワリヤーグはアドミラル・クズネツォフ級空母の2番艦として1985年に起工され、90年代初めソ連の解体に伴い、未完成のまま放置されていたものだ。98年にわずか2000万ドルという「捨て値」で中国が購入、2002年にスクラップ同然の赤錆だらけの姿で大連に曳航され、その後長い年月をかけて修復作業が進められてきた。しかし、所詮は老朽艦の「化粧直し」であり、目論見通り動くと期待したのが間違いなのかもしれない。

中国初の空母はどんな名前で登場するのか

 しかし、筆者には期待するものが1つあった。試験航海に乗り出すからには、「ワリヤーグ」(中国語で「瓦良格」)では恰好がつかないから、中国海軍艦船として正式な名称が与えられるはずであり、それを知りたかったのである。

 与えられる名称は、日本のマスコミ等が決めつけている「施琅」であるはずがない。「施琅」は清朝時代に台湾奪還を果たした水軍の将の名前であり、こんな名前を付ければ台湾、さらに米国を刺激するのは間違いない。清朝を打倒した「辛亥革命」の指導者、孫文を「国父」と仰ぐ中国共産党にとっても、清朝の軍人の名前を借りる合理的理由はない。

 中国海軍の大型艦はほぼ地名を艦の名称としている(例外は潜水艦で、原潜は「長征」、通常動力型は「遠征」で統一され、それに艦番号が付く)から、順当に予測すれば「北京」とか「上海」など省級の大都市が候補に浮かぶ。米海軍は人名を艦名に使うが、それに倣い「毛沢東」や「朱徳」といった艦名も考えられないではないが、米国の模倣はしないだろう。

 ただし、ワリヤーグはもともと旧ソ連の空母である。それを、ダミー会社を仕立てマカオで「海上カジノ」として使うという「ウソ」をついてまで手に入れた船体であり、出自は決して自慢できるものではないから、中国を象徴するような名称が与えられることはないだろう。